育種学雑誌
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条件的アポミクシス性植物であるニラに見いだされた単為発生能欠如個体
小島昭夫小園 照雄長戸 康郎日向 康吉
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1994 年 44 巻 2 号 p. 143-149

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抄録
ニラはアポミクシスの遺f云様式を分析的かつ定量的に研究するための材料として有望である.既に複相大胞子形成率および単為発生率の検定法が確立しており,また,それらの値がともに90%以.上であるアポミクシス性の高い品種の存在が確認されている.ただし遺伝子様式を詳細に解明するには,交配実験に用いる片親として両性生殖性個体も不可欠である.そこで本研究では,まず単為発生能を欠く個体の選抜を目的として,中国,韓国,日本,台湾からの収集・導入品32点(Table1)および品種間F116個体について単為発生率を調べた.また,単為発生能欠如個体の複相大胞子形成率を検定することにより,ニラにおけるアポミクシスの遺伝様式について予備的考察を行った.なお,収集・導入品32点の花の外部形態を観察した結果,大多数はAllium Tuberosumと同定されたが,A ramosumと同定されたものが1点(Huhehaote)あり(Fig.1),両種の中間的な形態を示したものも6点あった.このことから,ニラとして栽培されている作物は2つの形態種とそれらの雑種を含んでいることが分かった.開花5日後の除雄・無受粉花を固定し,胚珠を切り出してHerr氏のBB-4-1/2%液で透明化後,ノマルスキ微分干渉顕微鏡下で観察した.収集・導入品1点当たり,あるいはF1個体当たり50個体以上の胚珠を観察し,有胚胚珠について胚の細胞数を調べた(Fig.2).ニラでは単為発生初期の胚の細胞数が1日毎にほぼ2倍になることが報告されているので,単為発生開始時期(開花後日数)を次式により推定した
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