育種学雑誌
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44 巻, 2 号
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  • 野田 和彦, 川端 ちさと, 神前 健
    1994 年44 巻2 号 p. 115-120
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    種子発達過程において,特異的に発現する遺伝子の研究が進みつつある、これらの研究において,種子の発達を概括的に捉える必要がある.現在まで,コムギ種子の胚,胚乳の発達について多くの研究があるが,それらは各組織の詳細な組織的な研究であり,種子の発達段階を同定するのに適していない.現在までよく使われている発達段階は,胚乳の発達から推定する前乳熟期(watery),乳熟期(mi1ky),糊熟期(soft dough),黄熟期(harddough),完熟期(ripe),枯熟期(deadripe)である.Rogersand Quatrano(1983)は,コムギ種子の発達を再度検討し,種子の発達段階を5段階に分けた. 我々は,異なる発達段階の種子の組織標本を比較検討し,以下の6の発達段階に分けるのが適切と推定した.発達段階1(開花から開花後5日),胚は球状,胚乳の発達は急速である(Fig.1A).種子は4mm以下(Table2)で,白緑色(Fig.4A,B).発達段階2(開花後5日から開花後10日),胚はembryo axiと胚盤に分化する(Fig.1B)、胚乳の発達は急速(Fig.4C)、発達段階3(開花後10日から開花後15日),胚盤が伸長する(Fig.1C,Table2).種子の乾重の増加が最も急速(Fig.2B).胚乳は乳熟期.発達段階4(開花後15日から開花後20日)第一葉,根,子葉鞘がembryo axisで分化する(Fig.1D).胚乳の大きさは最大になる.種子はみずみずしい緑(Fig.4D).発達段階5(開花後20日から開花後30日),胚の分化が更に続き(Fig.1E),胚の乾重の増加が最も盛んである(Fig.2B).胚乳の乾重の増加も第2のピークを示す(Fig.2B).胚乳は糊熟期.種子は黄色くなりはじめる(Fig.4E,F).発達段階6(開花後30日から開花後50日),種子は乾燥をはじめ,褐色に変わる.黄熟期,完熟期,枯熟期をふくむ(Fig.4G,H)
  • 萩尾 高志
    1994 年44 巻2 号 p. 121-126
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ソルガム250品種の完熟種子を供試してカルス形成と植物体再分化の品種問差異を調査した.すべての品種につき,20粒の発芽種子をカルス誘導培地に置床した.カルス誘導培地の組成は2mg/l 2.4-D,30g/l sucrose,2g/lゲルライトを含むMS培地(pH6.0)で,30日間培養した.カルス継代培地の組成は2.4-D濃度を1mg/lに下げた以外はカルス誘導培地と同じで,同じく30日間継代培養し,再分化培地にカルスを移植した.再分化培地は2,4-Dを含まない他はカルス誘導培地の組成と同じで,置床後30日目に再分化状況を調査した. 本培養系では殆どの品種でカルス形成が認められた(Table1,Table2,Fig.1).植物体再分化の様相は不定根,不定芽を誘導する器官形成(organogehesis)で,明瞭な体細胞胚形成(somaticembryogenesis)は認められなかった.またカルスから不定根のみが分化する例が多く見られた(Table3,Fig.2).250品種のうちCK602,CKW5809,PE932203,PE954068,PE954110の5品種で植物体再分化(Fig.3)が比較的良好であった(Tab1e5)、また品種群ごとに見るとKafir品種群で植物体再分化が比較的良好で(Table4)あった.上記5品種及びKaf1r品種群は再分化を必要とするソルガムの実験系に有効に活用できるものと考えられた.
  • 佐藤 茂俊, 玉城 明美, 新城 長有
    1994 年44 巻2 号 p. 127-132
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    イネ早生遺伝子Ef-1を持つ台中65号の同質早生系統(T65・ER-1)の菊長は台中65号(T65)のそれに比較して短い.菊の短い品種では耐冷性が低いことは既に報告されている(鈴木1982,Satake1986).そこでT65・ER-1の短箱形質はEf-1の多面作用によるのか,或いはEf-1と強く連鎖している別の遺伝子によるのかを知るためにT65・ER-1/T65のF1及びF2並びに同F1にT65・ER-1或いはT65を交配した戻交雑F1を用いて菊長と出穂期との連鎖分析を行った.いずれも2期作に栽培した.
  • 根本 博, 横尾 政雄
    1994 年44 巻2 号 p. 133-136
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    異なる病害虫抵抗性遺伝子をもつ同質遺伝子系統を混合栽培する多系品種は,作物の抵抗性崩壊への対策の一つと考えられている.この研究では異なったトビイロウンカ抵抗性遺伝子をもつ水稲系統の混合集団上でトビイロウンカを実験的に飼育・選抜し,トビイロウンカの加害能力の変化に対する抵抗性混合集団の効果を調べた.混合集団を構成する系統としてトビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph1をもつ水稲の中間母本農3号(農3号と略す),bph2をもつ中間母本農4号(農4号),bph4をもつ中間母本農7号(農7号)を用いた.抵抗性系統の単独区と混合区で野生型トビイロウンカを飼育し,世代経過にともなう羽化率の変化を比較した(Table1).第一世代を経過したとき,感受性品種「むさしこがね」の上でトビイロウンカは83%の羽化率を示すのに対して,抵抗性系統の単独・混合区では羽化は抑制され,15%ないし58%の羽化率に留まった.しかし世代が経過するとともに羽化率は上昇し,単独区では5世代目に,また混合区では9世代目に,寄生餌として用いた抵抗性系統の上で感受性品種並に高い羽化率を示すトビイロウンカ選抜系が得られた(Figs.1,2). 各区の選抜系トビイロウンカの加害性を選好性によって比較した.非選抜系トビイロウンカが抵抗性系統を選好する頭数は感受性品種よりも少ないが,単独区によるトビイロウンカ選抜系は対象とした抵抗性系統に感受性品種並に着生した(Table2).また,2系統及び3系統による混合区から得たトビイロウンカ選抜系はいずれの対象系統にも感受性品種と同様に選好し,系統間差も認められなかった(Table3).混合区から得た選抜系は単独区から得た選抜系よりも幅広い加害能力をもっていることから,トビイロウンカ抵抗性に関して2系統から3系統の混合栽培はバイオタイプ発生を数世代だけ遅らせるものの,それを完全に抑制するには不十分であり,逆に加害範囲の広いバイオタイプの発生を招く危険性が高いと考えられた.
  • 野々村 賢一, 吉村 淳, 川崎 努, 岩田 伸夫
    1994 年44 巻2 号 p. 137-142
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    三次三染色体植物は正常の染色体組に加え,転座染色体を1本過剰にもつ異数体であり,多くの植物で細胞遺伝学的な材料として用いられている.三次三染色体植物を利用することにより,各標識遺伝子の座乗染色体腕や,動原体の位置,そして連鎖地図の方向を明らかにすることが可能となる.本実験ではイネの三次三染色体植物の作出を試み,その同定を行った. イネの三次三染色体植物を作出する方法として,組織的な三系交雑,すなわち〔一次三染色体植物/相互転座系統//正常二倍体〕を行った(Fig.1).花粉親である相互転座系統には一次三染色体植物の過剰染色体に一致する染色体が転座しているものを用い,そのF1から転座ヘテロー次三染色体植物を選抜して正常二倍体を交配した(Table3).選抜は三系交雑F1での形態を調査して行った(Table4).選抜個体は,自殖次代の分離調査と減数分裂期の染色体対合様式の観察により三次三染色体植物として同定した.
  • 小島昭夫 , 小園 照雄, 長戸 康郎, 日向 康吉
    1994 年44 巻2 号 p. 143-149
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ニラはアポミクシスの遺f云様式を分析的かつ定量的に研究するための材料として有望である.既に複相大胞子形成率および単為発生率の検定法が確立しており,また,それらの値がともに90%以.上であるアポミクシス性の高い品種の存在が確認されている.ただし遺伝子様式を詳細に解明するには,交配実験に用いる片親として両性生殖性個体も不可欠である.そこで本研究では,まず単為発生能を欠く個体の選抜を目的として,中国,韓国,日本,台湾からの収集・導入品32点(Table1)および品種間F116個体について単為発生率を調べた.また,単為発生能欠如個体の複相大胞子形成率を検定することにより,ニラにおけるアポミクシスの遺伝様式について予備的考察を行った.なお,収集・導入品32点の花の外部形態を観察した結果,大多数はAllium Tuberosumと同定されたが,A ramosumと同定されたものが1点(Huhehaote)あり(Fig.1),両種の中間的な形態を示したものも6点あった.このことから,ニラとして栽培されている作物は2つの形態種とそれらの雑種を含んでいることが分かった.開花5日後の除雄・無受粉花を固定し,胚珠を切り出してHerr氏のBB-4-1/2%液で透明化後,ノマルスキ微分干渉顕微鏡下で観察した.収集・導入品1点当たり,あるいはF1個体当たり50個体以上の胚珠を観察し,有胚胚珠について胚の細胞数を調べた(Fig.2).ニラでは単為発生初期の胚の細胞数が1日毎にほぼ2倍になることが報告されているので,単為発生開始時期(開花後日数)を次式により推定した
  • 野村 幸雄, 前田 桝夫, 土屋 孝夫, 真柄 紘一
    1994 年44 巻2 号 p. 151-155
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ラッキョウ(ラクダ系福井在来)とネギとの種間交雑において,効率的に雑種を作出するためのラッキョウの子房培養条件について検討した.開花期の不一致を克服するため食用ネギ属植物の花粉の採取,貯蔵についても検討し,確立された条件をもとにラッキョウと食用ネギ属植物との種間交雑を試みた. ラッキョウを母親とし,花粉親にネギ,タマネギ,ボンベイオニオン(分球性タマネギ),ニラ,グレートヘッディドガーリックを用いた.花粉の貯蔵温度は,5℃よりも-30℃のほうが花粉の発汗率の低下を防ぐことができた.貯蔵期間は,-30℃のネギ,タマネギで貯蔵開始後2年6か月間,発芽率をかなり高く維持することができたが,5℃では1年6か月後にはすべての植物の花粉発芽率がOになっていた(Fig.1).ネギを除いて採取時の花粉発芽率がすべて低かったので,ネギ以外の植物について開縞直後から経時的に花粉発芽率を調査したところ,開箱3時間以内の花粉で,すでにネギの24時間以内の花粉の発芽率より劣っていた(Fig.2).それぞれの花粉発芽率は開菊6時間後までは低下を続けたが,その後12時間目までは大きな変化はなく,12時間から24時間の間に大きく低下した.このことから,花粉の採取は開菊直後か,遅くとも12時間以内には採取すべきと判断された.
  • 木原 誠, 船附 秀行
    1994 年44 巻2 号 p. 157-160
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    オオムギプロトプラストからの稔性植物体の再分化についてこれまで2つの報告がなされているが,再分化率の低さや稔性の低さが問題となっていた.我々は,これらの問題点を改善することを目的として,オオムギ未熟胚由来カルスからエンブリオジェニックなサスペンションを誘導後,確立された細胞系からプロトプラストの単離,培養を行い,植物体の再分化を試みた.その結果,得られたプロトプラストが高い再分化能を有している事,また長期継代培養されたサスペンションに由来するプロトプラストにおいても,再分化能の低下がみられない事が確認された.また得られた幼植物体を体上げしたところ順調な生育をみせ,過去の報告例を上回る数の稔性植物体を得る事ができた. 温室および人工気象庫(12±2℃,16時間日長)の2つの異なる栽培条件で育成されたオオムギ品種Igriの未熟胚からカルスを誘導し,2mg/l2,4-Dと30g/lショ糖を含む修正AA培地を用いてサスペンションを作出した.その結果安定的で高い増殖能を持った9つの細胞系を得ることが出来たので,各々の細胞系からプロトプラストを単離,培養した(Table1).プロトプラストの分裂率は,0.6-8.0%であった.得られたコロニーから再分化を試みた結果,人工気象庫で育成された植物体の未熟胚に由来するサスペンションでは,2つの細胞系(cell line CA2,cell line CA3)で緑色シュートの分化がみられ,cell line CA3では106プロトプラストあたり27の緑色シュートの分化がみられた.温室で育成された植物体の未熟胚に由来するサスペンションでは,1つの細胞系(cell line HA5)で低頻度の緑色シュートの分化がみられただけであった.この事より,オオムギプロトプラストからの植物体再分化における材料植物体の栽培条件の重要性が示唆された.得られたこれらのシュートはホルモンフリー培地で発根させた後鉢上げし,2ヵ月の低温処理を行った.現在,cell line CA3のプロトプラストに由来する体上げ個体の全てで稔性が確認されている.また,この。cell line CA3について,プロトプラストからの再分化能を継時的に調べたところ,カルス誘導後23ヵ月でも106プロトプラストあたりの緑色シュート分化数が(55と高い再分化能力を有している事がわかった(Table2).これらの事から,本実験の培養条件下における長期問のオオムギサスペンション細胞の再分化能力の維持およびプロトプラストからの高頻度の植物体再分化が可能であることが明らかになった.
  • 石坂 宏, 植松 盾次郎
    1994 年44 巻2 号 p. 161-166
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    c.persicum(2n=48)とC..hederifolium(2n=34)の交雑は胚珠培養を適用することによって雑種個体(2n=41)が得られるが,その雑種個体は不稔となり,育種素材としては利用できない.本試験では交雑胚珠のコルヒチン処理と培養,及び雑種の開花個体へのコルヒチン処理によって複二倍体(2n=82)を育成し,その特性を調査した.C.persicum二倍体晶種を種子親にしてC. hederifoliumの花粉を交配した.交配後,21日目に子房を採取し,表面殺菌後,コルヒチン0.05%を含むMS,ショ糖3%,pH5.8の固形培地に胚珠を胎座に付けたまま置床し,2ポC,暗黒下で処理を行なった.一定期間処理した後,MS,ショ糖3%,ココナットミルク10%を含むpH5.8の固形培地に移植して2ポC,暗黒下で培養した.無処理の胚珠からは雑種が発芽個体の形で得られた(Fig.1A).10日,15日間コルヒチン処理した胚珠からエンブリオジェニックカルスが得られたが(Fig.1B),20日,25日問処理した胚珠は全て枯死した.このエンブリオジェニックカルスをMS,ショ糖3%の固形培地に移すことによって胚横体が得られた(Fig.1C).これらの胚横体から116個の開花個体が得られ,このうち38個体が稔性を有していた
  • 戸田 修
    1994 年44 巻2 号 p. 167-175
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    富山県における水稲奨励品種決定試験(奨決試験)の場所は,気象,土壌条件などに特徴を持つ県内10数カ所に設置されているが,品種反応を通した詳細な考察はあまりされていない.ここでは品種選定の場の適否を検討すること,および選抜の場の活用を図ることを目的として,まず数年にわたる奨決試験データをまとめて分析し,各場所における選抜や選定の場に関する新たな知見を引き出し得ることを示した.奨決試験の1961年から1O年間のデータを3期に分けて共通な品種と場所を抽出し,13~14試験地収量の<品種・系統〉・年次による変動を解析した.各期ごとの2元配置分散分析の結果から場所ごとに分散成分と遺伝率を求めたところ,収量の遺伝率の高低は平均収量の多少とはあまり関係のないことを認めるとともに,1期がそれ以上の期において黒部,婦中,戸出,小矢部,氷見,滑川,福野が高い遺伝率を示した.次に回帰分析(回帰係数の高低),主成分分析(主成分スコアの大小),クラスター分析(類似度合)により求めた指標から,各場所の傾向を検討した結果,安定性(または変動性)の面からみて顕著な反応を示す場所を見いだした.また,回帰係数や第1主成分スコアは年次分散と有意な相関をもち,年次の影響が大きいことがわかった.以上の結果から,品種・年次の反応を通した場所の傾向を各種の指標などから明らかにし,そのうち,遺伝率が特に高い黒部,婦中,氷見,福野,年次分散が特に大きい入善,回帰係数が特に小さい戸出,八尾および回帰係数が特に大きい滑川,高岡を見いだした.これらの特徴から,育種目標に応じた環境条件を選び,雑種集団を養成,選抜することにより目的とする変異体を効率的に作出できると思われる.また,本報で用いた分析方法は,他県や他作物でも利用が可能と思われる.
  • 岡本 正弘, 堀野 俊郎
    1994 年44 巻2 号 p. 177-181
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    米の窒素含量の品種間差異および栽培条件による変異と穂ぞろい期の葉色および実用形質との関係を調べた.寒冷地以南の31品種を用いて玄米の窒素含量と各形質との相関をみたところ,単相関は葉色でもっとも高く・=O.744**であった.さらに,玄米の窒素含量と葉色との偏相関係数は,出穂期・わら重・初重の効果を除いた場合でも安定して有意であった.葉色の他,玄米の窒素含量は出穂期・わら重・初重との間にそれぞれ。r=0,558**,r=0,599**,r:=0,507**の有意な単相関が認められた.しかしこれらの形質では葉色で補正すると玄米の窒素含量との偏相関は有意にはならなかった.一方,米の窒素含量は早期栽培では低下し,多肥栽培では増加したが,葉色の変動もこれとほぼ対応していた.以上のように,日本型水稲においては米の窒素含量は遺伝変異や環境変異を問わず,穂ぞろい期の葉色と高い相関関係にあることが示された.
  • 馬 有志, 富出 因則, 中田 昇, 安室 喜正
    1994 年44 巻2 号 p. 183-189
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    普通コムギに添加されたAgriculture Intermedium(2n=42,E1E1E_2E2 XX)染色体の検出・同定に有効な反復DNA配列をクローニングした.Agriculture IntermediumのMboIゲノミックDNAライブラリーからAgriculture Intermediumには存在するが、Triticumaetivum ev.Chinese Springには存在しない2種類のクローンをスクリーニングした.クローンpTA100はライムギのEco001091-380bpファミリー(Tomita etal.1993)と同様に制限酵EcoO1091で定義される基本単位の大きさが350bpのタンデム型ファミリーであり,350bpファミリー(Bedbrook et al.1980,Appels etα1.1986)と同じファミリーを構成するEcoO109I-380bpファミリーとの相同性を示した.したがって,pTA100は350bpファミリーに属している.クローンpTA28はEcoO109Iサイトで定義される6800bp,6200bp,3600bpおよび1850bpの反復単位を持つファミリーであった.
  • 飯田 幸彦, 小西 猛朗
    1994 年44 巻2 号 p. 191-194
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    わが国の二条大麦品種について大麦縞萎縮ウイルスII型系統に対する反応を調査した結果,抵抗性とエステラーゼ同位酵素遺伝子型との間に密接な関係が認められた(飯田ら 1993).そこで,大麦縞萎縮ウイルスI型系統に対する抵抗性遺伝子とエステラーゼ同位酵素遺伝子群との連鎖関係を明らかにするために,つぎのような実験を行った.すなわち,関東中生ゴールド(罹病性)×ミホゴールデン(抵抗性)及び栃木ゴールデンメロン(罹病性)XPrior(抵抗性)のF2個体のエステラーゼ同位酵素遺伝子型を調べるとともに,それらF3系統の大麦縞萎縮ウイルス皿型系統に対する反応を調査した.その結果,抵抗性は単一の遺伝子によって支配され,抵抗性遺伝子は第3染色体長腕末端部に座乗するエステラーゼ同位酵素遺伝子群Est1-Est2-Est4)と組換価10.15%と6.97%で連鎖していた.これらの組換価から,この抵抗性遺伝子は同じ第3染色体に座乗するミサトゴールデンのもつ抵抗性遺伝子とは明らかに遺伝子座を異にするものと考えられる.
  • 福田 善通, 吉田 久, 福井 希一, 小林 陽
    1994 年44 巻2 号 p. 195-200
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    脱粒性易でインド型多収品種の南京11号の種子への60C。γ線照射(20KR)および50mMエチルメタンスルフォネート水溶液による7時間浸漬の2種類の突然変異誘起処理を行い,5つの離脱粒性突然変異個体を選抜した.それぞれの系統名を,SR-1,SR-2,SR-4,SR-5(後の北陸143号),SR-6とした.これら5つの突然変異系統について,穀粒脱粒性試験装置(TR-ll)を用いて脱粒性程度を測定し,脱粒性極難のSR-1,難のSR-4,北陸143号(SR-5),SR-6の3系統,やや難のSR-2の3グループに分類した.またSR-1,SR-2,北陸143号,原品種南京11号については小穂から小枝梗に至る縦断切片を作成し,護穎基部の離層形成の有無および細胞組織の崩壊程度を観察した.南京11号には明瞭な離層が認められた.一方,突然変異系統のSR-1には離層形成が全く認められず,北陸143号には明瞭な離層はないが護穎基部における細胞群の部分的崩壊が認められた.またSR-2にもわずかな細胞群の崩壊および護穎と副護穎との間が細長くなる小穂内部構造の変異が認められた.以上の結果より5つの離脱粒性系統は,脱粒性程度において,また脱粒性に係わる離層形成や護穎基部の細胞崩壊に関予する3種の異なった遺伝変異により生じたものと推定された.
  • 田部井 豊, 大澤 勝次, 西村 繁夫, 渡辺 紳一郎, 土屋 健一, 吉岡 啓子, 藤沢 一郎, 中島 皐介
    1994 年44 巻2 号 p. 207-211
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    前報の組換えメロンの形態及び生育特性,遺伝子拡散に関わる特性の報告に続き,他の作物に及ぼす生育阻害効果として,組換えメロンのフェノール性酸の産生能,茎葉からの揮発成分の分析,植物残溢及び栽培土壌の影響を検討し,さらに微生物相に及ぼす影響,ベクターに用いたアグロバクテリウムの残存性について調査したので結果を報告する
  • [記載なし]
    1994 年44 巻2 号 p. 213-218
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    種苗法第12条4・第1項の規定に基づき登録された品種は農林水産省より告示・通達されている.新しく通達された品種について,種苗課の了解を得てその内容の一部を抜粋して紹介する.なお,農林水産省試験研究機関および指定試験で育成された農林登録品種については本誌上で若干くわしく紹介されているので,ここでは登録番号,作物名:品種名,育成地を記すに止める.記載の順序は登録番号・作物名:品種名,特性の概要,登録者(住所):育成者氏名とし,登録者の住所は公的機関については省略し,その他は各号の初めに現れる場合にのみ記載し,登録者と育成者が一致する場合は登録者のみを記載することとする.六号では平成5年3月17日(第2452号~3511号)及び平成5年3月19日(第3512号~3571号)に登録された品種を紹介する.
  • 横尾 政雄, 斎藤 滋, 東 正昭, 松本 定夫
    1994 年44 巻2 号 p. 219-222
    発行日: 1994/06/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    いつの時代でも品種改良における最大の目標は,収量性向上の飽くなき追求にある.このことは水稲の品種改良でもf列外ではない.1970年代以降,米の生産量が消費量を上まわり,280万haの水田の四分の一を減反せざるをえない現状ではあるが,将来,農地をさらに効率的に利用して穀物自給率を高めるために多収品種の育成は必要である.そこで,農林水産省では水田の高度利用の施策をとる一方,プロジェクト研究「超多収作物の開発と栽培技術の確立」を1981年から開始した.その具体的な目的は,将来の稲作を想定し,超多収品種の育成と栽培技術の開発によって米の収量水準を一段階も二段階も上げておくことであった.また,このプロジェクトでは,収量水準の向上に外国品種を積極的に利用することが意図された. 著者らはとくに韓国品種「密陽23号」の半矢要性(草丈の低い)草型と多収性に着目した.その理由は,密陽23号が1978年,79年と続けて韓国で最も広く栽培された水稲品種であり,韓国の『緑色革命』に寄与していたからである.密陽23号は旺盛な分けつ,直立して長く厚い葉,剛直な桿,籾が多くて長い穂などの特徴をもっていたので,これらの特性を日本品種に導入すれば収量性をさらに向上できると期待した.この品種を交配母本に用い,農業研究センターメ)ミ1983年に関東138号を育成して以来,1993年までに合わせて9系統を地域農業試験場で育成した(第1表).東北農業試験場でも1986年に奥羽326号を,ユ989年には奥羽335号を育成した. 密陽23号を利用するに当たり,この品種の多収性を栽培生理学の側面から解析した研究成果は多数報告されているが,育種で必要な形質遺伝の知見についてはこれまでほとんど公表されていない.著者らは奥羽326号の育成の傍ら,密陽23号を用いた雑種の形質変異を調べたので,上記プロジェクト研究が1989年に一応終了し,また,この品種を直接に利用した育種が一段落したとみられる現在,今後の参考としてここにその概要を紹介する.
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