育種学雑誌
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六倍体コムギとトウジシビエの交雑における胚形成および半数性植物体再生の頻度に及ぼす要因
稲垣 正典Natasha Bohorova
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1995 年 45 巻 1 号 p. 21-24

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抄録

トウジシビエとの交雑を利用する六倍体コムギの半数体作出の頻度に及ぼす要因を明らかにするため,コムギ品種ChineseSp.i.gを母親にトウジシビエ系統NEC-7006を花粉親として交雑を実施した.コムギの開花一日前,開花時および開花一日後にトウジシビエ花粉を授粉した.授粉後18日目に得られたコムギ未熟胚を合成ホルモンの添加・無添加および異なる培地固形剤(Gelriteおよび寒天)を組合せた人工培地で培養した.一方,授粉後14日から26日まで異なる期間発育されたコムギ未熟胚を合成ホルモン無添加の寒天培地に置床し植物体再生を調べた.コムギの穂の発育程度と胚形成の頻度との関係では,コムギの開花一日前に授粉した場合の頻度は25.4%であり,開花時および開花一日後に授粉した場合よりも高かった.人工培地の組成と植物体再生の頻度との関係では,合成ホルモン添加とGelriteの組合せた培地では,植物体再生の頻度は最も低かった.また,合成ホルモンの添加は胚からの発根を著しく抑制する傾向にあった.胚の発育程度と植物体再生の頻度との関係では,授粉後14日目の0.7mm長の胚が54.4%の頻度で植物体に再生したが,授粉後18日目以降胚が大きく発育するにつれて植物体再生の頻度は急速に低下した.再生した植物体のうち染色体を調査した118個体すべては21本の染色体を有する正半数体であった.以上から,交雑時に供試するコムギの穂の発育程度および交雑後の人工培養に供試するコムギの胚の発育程度はともにトウジシビエとの交雑を利用するコムギ半数体作出の頻度に大きく影響することが明らかとなった.

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