育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
二倍性半数体と野生種由来のF1雑種群からの短日条件下における二倍性バレイショ系統選抜
渡辺 和男M. OrrillolS. Vegal岩永 勝R. OrtizR FreyreG YerkS. J. Peloquin伊敷 弘俊
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 45 巻 3 号 p. 341-347

詳細
抄録
二倍性バレイショ塊茎形成種遺伝資源を利用して,短日条件下および小集団での育種選抜効率を,二倍性半数体と野生種由来の15の二倍性F1雑種群で検討した.二倍性F1集団育成に使用された親系統のうち,二倍性半数体は長日条件下で,二倍性野生種は短日条件下でそれぞれ塊茎形成を行う.これら二倍性F1の実生517個体を使って,標高3,200mの高地耕作地(Huancayo,Peru)で短日条件での塊茎形成の初期選抜が行われた.続いて,四倍体との交雑を可能にする全数生花粉についての選抜を,アセトカーミングリセリン染色によって行った.これは,Huancayo(高地),San Ramon(亜熱帯),およびLima(灌漸砂漠)の異なる環境条件下ですくなくとも一度は行われた.その結果,60系統が環境に安定して,全数性花粉を形成することが認められた.これら系統の全数性花粉は,減数分裂第一次分裂還元型全数性花粉(FDR2nponen)であることがわかった.これら60系統について,さらにジャガイモ蛾,根瘤線虫,青枯病,あるいはジャガイモウイルスY(PVY)に対する抵抗性に関して選抜を行った.そのうち,15系統が少なくとも上記のうち一つの病虫害についての抵抗性を示した.これらの二倍性抵抗性系統について,四倍体系統への量的遺伝子によるジャガイモ蛾あるいは根瘤線虫抵抗性の伝搬が全数性花粉の機能によって可能であることが認められた.二倍性バレイショ塊茎形成種遺伝資源を使っての塊茎形成,全数性花粉,抵抗性の総合的選抜は,小集団でも十分可能であることが示唆された.また,短日条件に適応していない親系統を使っての後代選抜は,塊茎形成については十分効果があることが認められた.
著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top