育種学雑誌
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ムギ類赤かび病における寄主・病原関係の解析
武田 和義呉 基日部田 英雄
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1995 年 45 巻 3 号 p. 349-356

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抄録
ムギ類赤かび病菌(Fusarium spp..)104菌株をコムギ2品種とオオムギ2品種の各々に接種した実験,ならびに12菌株をコムギ10品種とオオムギ10品種に接種した実験によってムギ類赤かび病菌にレースの分化があるかどうかを検討した.その結果,供試菌株とオオムギ品種,ならびに供試菌株とコムギ品種の間の交互作用は非常に小さかったが,個々の菌株のオオムギとコムギに対する反応の違いによる交互作用には統計的に有意性が認められ,相対的にオオムギを強く犯す菌株とコムギを強く犯す菌株が見出された.しかし,オオムギとコムギに対する寄主特異性による分散は一般的(平均的)な病原カの差異による分散の1/22~1/15にすぎないので,オオムギおよびコムギの属間においても寄主・病原関係の交互作用は小さいとみられた.ムギの非かび病についてはMesterhazy(1987.1988)がF.culmorium4菌株,Snijde.s and Eeuwijk(1991)がF.culmorium2菌株とF.graminearium2菌株,武田ら(1992)が非かび病菌3菌株を用いて接種試験を行い,いずれも菌株とコムギ品種の交互作用が統計的に有意ではあるが,菌株と品種の組合せによって抵抗性反応が逆転するようなレース分化は無いと報告している.しかし,同じFusarim属菌の申でもトマト萎凋病菌(F.oxysporumf.lycopersici)のようにレース分化が報告されている事例もある(Alexander and Tucker1945)ので,本研究では由来の異なる多数の菌株を供試して,ムギ類赤かび病菌に寄生性の分化があるかどうか,特にオオムギとコムギという寄主の属のレベルにおいて寄主と病原体の間に交互作用が認められるかどうかを検討した.
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