抄録
ソバ属植物のルチン分解酵素活性の核磁気共鳴(NMR)法による検出について検討した。まず標準としてルチンとケルセチンのプロトンNMRシグナルについて測定を行った。ルチンとケルセチンのシグナルを効率よく取得するために,溶媒であるDMS0と水の大きなNMRシグナルを抑制するため二重照射を行った。その結果,これらのフラボノイド骨格のプロトンシグナルの位置が異なっていることが明らかになった。次に,ソバ粉に酢酸緩衝液(pH5.0)を加えて得た抽出液を粗酵素液とし,DMS0に溶解したルチン溶液に添加し,標準と同様の溶媒系にして,この二重照射NMR法によってソバ数品種の酵素活性を測定した。酵素活性はルチンからケルセチンヘのNMRシグナルの変化として検出が可能であることを明らかにした。すなわち,普通ソバの抽出液を添加した場合にはNMRシグナルに変化は認められなかったが,タッタンソバの抽出液を添加した場合にはルチンからケルセチンヘのNMRシグナルの変化が認められた。このように,NMR法は複数溶媒系を用いた酵素活性の検出に有用であること,また育種におけるスクリーニングの手法として用いることが可能であることを明らかにした。