育種学雑誌
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オオムギとニンジンの体細胞雑種カルスの耐寒性と耐塩性
木坂 広明亀谷 寿昭
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1998 年 48 巻 1 号 p. 11-15

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抄録
オオムギとニンジンのプロトプラスト融合により3個体(no.1, no.2, no.3)の体細胞雑種を作出した(Kisakaら,1997)本研究では,これらの体細胞雑種植物より誘導したカルスを用いて,雑種カルスの耐寒性及び耐塩性について調査し,オオムギの持つ耐寒性及び耐塩性が細胞融合によって体細胞雑種に導入されたか否か検討した。体細胞雑種カルス,no.2はニンジンや他の体細胞雑種カルスよりも高い耐寒性を示した。さらに,no.2は,NaClやKClに対してもオオムギと同様な耐性を,no.3は,オオムギとニンジンの中間的な耐性を示した。しかし,no.1においては,ニンジン同様にNaC1及びKClに対して耐性を示さなかった。体細胞雑種カルスno.2及びno.3は,ニンジンよりもベタイン含量が高く,また,NaClで処理するとオオムギ同様にベタイン含量が増加した。体細胞雑種及び両親のカルスは,ベタインを補った培地上で培養した結果,旺盛な生育を示したが,生育阻害量のNaC1とベタインを加えた培地上では,NaC1による成長阻害は回避されなかった。以上の結果より,体細胞雑種カルスno.2の耐寒性及び耐塩性は,細胞融合によってオオムギより導入された可能性が示唆された。
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