抄録
チェリモヤは中南米原産の亜熱帯果樹で,果皮の形態により,5つのタイプに分類されているが遺伝的特性についてはまだ不明な点が多い。本研究は和歌山県果樹園芸試験場で栽培されている19品種を供試し(Table 1),AFLP法によって遺伝的多様性を検討した。AFLP分析では1つのプライマーの組合せあたり平均10-47の範囲に分布する33個の再現性のある増幅されたバンドが示された。増幅されたバンドの大きさは全てのプライマーの組合せにおいて50-450bpの間に位置した。30%以上(88/264)のバンドが品種間で多型を示した。最も有効なプライマーの組合せ(E-AGT/M-8)では21の多型を示すバンドが見られ,合計88の多型バンドが認められた(Fig.1)。これによりチェリモヤ品種間に大きな遺伝的多様性のあることが確認された。AFLPにより作成された系統樹図(Fig.2)は19品種すべてを区別することができ,それらの類縁関係を推定できた。その類似度はO.33-O.95の範囲にあった(Table 2)。最小値は‘フィノ・デ・ヘテ'と‘オット'または‘サルモン'との間,最大値は‘ベイズ'と‘ベイオット'との間でみられた。以上の試験結果は,たとえ形態学的分類と一致しなくても,AFLPはチェリモヤ品種の系統進化を識別するうえでよい答を与えてくれた。AFLPはチェリモヤ品種間の系統学的な類縁関係を再検討するのに有効な手段であると考える。