1998 年 48 巻 4 号 p. 365-370
大量に調製したイネ種子胚を用いてα-アミラーゼの生合成とその制御に関する研究を行った。形態的・生化学的解析の結果,この実験に用いた種子胚が無傷で生物活性を持ち,胚特異的なα-アミラーゼの研究に最適であることが明らかとなった。α-アミラーゼはジベレリンによってその合成が促進されることが知られている。胚で合成されるα-アミラーゼでは見かけ上外生ジベレリンによる促進効果を示さないが,これは吸水時において胚でジベレリンが十分合成されるためと推測された。α-アミラーゼの活性染色法を用いた解析の結果,5種類の等電点の異なるα-アミラーゼアイソフォームが検出された。RAmy1A遺伝子産物であるアイソフォームAの合成においてはジベレリンとアブシジン酸等の制御を受けているのに対し,RAmy3D遺伝子産物であるアイソフォームGとHはそのような制御は検出されなかった。また,グルコースによって両者の合成は抑制された。種子胚で合成されるα-アミラーゼの生理的意義と有用形質についてあわせて議論した。