1959 年 9 巻 4 号 p. 212-218
インド稲の1品種Surjamkhiと農林1号との間のF1は完全稔実性で僅かの程度の花粉不稔性を示すが,F2以後に不規則な部分不稔個体の分離がみられる。この報告ではこの雑種で観察された不稔性とは直接には関係ないとみられる花青素による〓先着色の異常分離を報告し,両品種間に染色体構造の差異を示唆した。Surjamkhiの〓先色は暗紫で農林1号のそれは赤色である。両者の〓先色に関する遺伝子型はそれぞれCBSpAおよびCBSpaと決定された。両者の間のF1の〓先色は暗紫で,F2では暗紫:赤=3:1の分離が当然期待されたが,事実はこれに反してF2全個体数の約30%の〓先無色個体出現がみられた。〓先無色個体の出現機構について考察が行われ,出理頻度の高いこと,F3系統で更に異常な分離が観察されたこと,F3無色個体の既知遺伝型の分析品種との交雑結果等から,関係遺伝子の劣性突然変異によるとは考えられないと結論され,成熟分裂に異常性を与えぬ程度の微小な包含逆位や潜性転座等による遺伝子座のずれが示唆されたが,決定的な結論は次の報告にもちこされた。