育種学雑誌
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植物の放射線感受性III. 倍数性植物についての実験
藤井 太朗村松 清二
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1959 年 9 巻 4 号 p. 245-252

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抄録

植物の放射線感受性は本質的には遺伝子組成によつて決定されるが,倍数性や生理状態によつても変化することが知られている。筆者らは甜菜,ダイコン,イネ,コムギ,タバコなどを用い.発芽率,草丈,生存率などについて倍数性と放射線感受性との関係を調べた。甜菜,ダイコン,レンゲ,トウガラシ,スイカの同質四倍体はそれらの二倍体よりも著るしい抵抗性を示した。異質倍数体で野生イネでは倍数性と感受性との関係は明らかでなかつたが,栽培種に最も近い2xのO.sativa f.spontaneaが最も抵抗性であつた。コムギの倍数休では2xが最も感受性が高かつたが,4xと6xの間では明らかな差が見られなかつた。さらにタバコではn=9~24の染色体数を異にした数種を用いて実験を行つた結果,アメリカ種では染色体数の最も多い N.rusica, N.tabacum が最も抵抗性であつたが,反対にオーストラリア種では染色体数の最も多い N.Debeneyi が最も感受性が高かつた。この結果同質四倍体は二倍体に比べて明らかに抵抗性を示すが、異質倍数体ではそのゲノム遺伝子構成が異なるため,感受性との間に平行関係が現われない場合が生じるものであろう。

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