2011 年 2 巻 2 号 p. 175-181
急性腎障害(acute kidney injury:AKI)はICUにおける多臓器不全のなかでも生命予後を規定する重篤な臓器障害であり,その早期診断は極めて重要である。しかし,数十年にわたり血清クレアチニンおよび尿量といった感度および時間的変動に乏しいマーカーにAKI診断が依存している現状がある。ICUにおけるAKIでは,主に尿細管上皮細胞障害がその病態形成に関与しており,上皮細胞障害を鋭敏かつ早期に検出できる新規AKIバイオマーカーの開発が国際的に盛んとなっている。今回,われわれは混合型ICU症例におけるAKI診断および死亡予測に対して,尿L-FABP,NGAL,IL-18,NAG,アルブミンの有用性を検討した。新規AKIバイオマーカーが臨床応用に耐えうるかどうかについては,AKI診断のみならず血液浄化療法の開始や死亡率などの重症度・予後予測が可能であるかを検証する必要がある。