日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
変異Polg1 トランスジェニックマウスの双極性障害動物モデルとしての有用性
窪田 美恵加藤 忠史
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 22 巻 2 号 p. 109-116

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抄録

我々は,気分障害を伴う遺伝性ミトコンドリア病の原因遺伝子Polg1 に点変異を持つマウス(変異 Polg1 トランスジェニックマウス[mutant Polg1 transgenic (Tg)マウス])を作出し,双極性障害モデルマウスとしての妥当性を検討してきた。さらに,脳内遺伝子発現について,同腹野生型との差異を調べ,患者死後脳での遺伝子発現解析の結果と比較することにより,両者の共通点として,ミトコンドリア関連遺伝子であるPpifの発現減少を見出した。Ppif は,Ca2 +を制御する巨大チャネルである Permeability Transition Pore(PTP)を調節する蛋白質,シクロフィリンD(cyclophilin D :CypD)をコードする。Tgマウス脳ミトコンドリアではCa2 +取り込みが亢進しており,この遺伝子発現減少がミトコンドリアにおけるCa2 +制御機能を変化させると考えられた。また,CypD 阻害薬(NIM811)の慢性投与により,Tgマウスの輪回し行動における異常が抑制されたことから,CypD が新規治療薬の標的となる可能性がある。これらの結果から,Tgマウスのモデル動物としての有用性が示唆された。

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© 2011 日本生物学的精神医学会
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