抄録
従来,白質は神経軸索の通り道でしかなく,神経細胞体で生じた情報を正確に伝える機能を担 っているに過ぎないと考えられてきた。しかし,①軸索の髄鞘形成後もオリゴデンドロサイトが活動依存的に神経情報伝導速度を調節し,②統合失調症等,精神疾患の病態に白質の障害が関与する証左が得られ,現在,白質の機能を根本的に再考すべき時期に至っている。これまで,白質変性疾患は脱髄疾患が主たるもので,治療法も開発されているが,その知見は精神疾患の病態解明に活かされていない。本総説では,脳領域各部の情報を統合する場として白質の機能を軸索・グリア相互作用を介して明らかにし,その破綻としての病態を学際的に検討したい。