日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
認知症薬物療法の実際
工藤 喬
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 25 巻 1 号 p. 3-6

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抄録
認知症,特にアルツハイマー病の根本治療薬,いわゆる Disease-modifying drugs の開発が近年精力的に進められているが,臨床治験成績で芳しいものは未だ上がっていない。したがって,現状のアルツハイマー病に対する薬物療法として,Symptomatic drugs,すなわちドネぺジル,ガランタミン,リバスチグミン,あるいはメマンチンにしばらくは頼らざるを得ない。2011 年 WFSBP は Guidelines for the Biological Treatment of Alzheimerʼs disease and other dementias を発表し,Symptomatic drugs の使用について指針を示している。ドネぺジルは,一番初めに臨床使用が始まったコリンエステラーゼ阻害薬であるが,acetylcholine esterase の選択性や長い半減期が特徴である。ガランタミンは,コリンエステラーゼ阻害作用のほかに,ニコチン性受容体にアロステリック作用を持つのが特徴である。リバスチグミンは, acetylcholine esterase に対する作用ばかりでなく butyrylcholine esterase に対する作用を持つのが特徴である。メマンチンは,グルタミン酸 NMDA 受容体アンタゴニストであり,グルタミン酸による神経障害を抑止する。これらの特徴を踏まえて,Symptomatic drugs を使い分ける必要がある。
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© 2014 日本生物学的精神医学会
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