2015 年 26 巻 4 号 p. 175-179
統合失調症では,大脳皮質における GABA ニューロンに関与する遺伝子の発現異常,GABA ニューロンによって生じると考えられている大脳皮質のγ- oscillation に異常が認められることから,GABAニューロンの異常と統合失調症の関与が示唆されている。我々はヒトで統合失調症を多発する 22q11欠損症候群のモデルマウスを用いて,GABA システムと統合失調症様行動異常の関与を検討してきた。このモデルマウスの統合失調症様行動異常は GABA A α2/3 受容体 agonist である SL651498 で正常化された。さらに,22q11 欠損領域に存在する Comt が前頭葉にて GABA ニューロンの活性と GABA 放出量に影響を与え,統合失調症様行動異常に影響を与えていることが明らかとなった。以上の知見により,Comt の欠損によって引き起こされる GABA ニューロンの機能異常が 22q11 欠損症候群でみられる統合失調症に関与する可能性が示唆された。