日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
ゲノム研究でDisorderをDiseaseにする試み
高田 篤
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 28 巻 3 号 p. 140-143

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抄録

これまでの精神神経医学の歴史において,「Disorder」─似たような症状と社会機能の障害によって定義され必ずしも病因は明らかでない疾患単位─の一部が,「Disease」─既知の病因に基づく疾患単位─として時に再定義されてきた。こういった発見は,組織学,脳画像,生化学検査等の技術革新によってもたらされたものであるが,昨今のゲノム解析技術の進歩により,ゲノム研究によるDisorderからのDiseaseの単離が加速されつつある。例えば,操作的診断基準で自閉スペクトラム症,統合失調症と診断される集団一万人のうち,約0.1-1%の症例は,それぞれCHD8,SETD1Aといった遺伝子の機能を失わせるようなゲノム配列変異が原因となることが明らかになっている。こういった発見を加速させるための戦略,得られたゲノム所見の適切な解釈などを含めて概観したい。

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© 2017 日本生物学的精神医学会
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