日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
ストレスによる情動変容の誘導における炎症の役割
北岡 志保
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 29 巻 4 号 p. 168-172

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抄録

適度なストレスは生体の適応反応を誘導する。一方,ストレスの遷延化は精神疾患のリスク因子となる。このようなストレスによる情動変容のメカニズムには不明な点が多い。近年ストレスによる情動変容における炎症様反応の重要性が確立され,中枢および末梢での炎症様反応が調べられている。脳内では,反復ストレスによる前頭前皮質のドパミン系の抑制にミクログリア由来の炎症関連分子が関与し,反復ストレスによりミクログリアは活性化される。末梢では,ストレスによる内分泌応答は骨髄系細胞を活性化し血中の炎症性サイトカインを上昇させ,ストレスによる交感神経の活性化は血中の好中球・単球を増加させる。さらに,末梢の変化がミクログリアの活性化に関与する可能性が示唆されている。これらの知見は,中枢‐末梢連関が炎症の悪循環を形成することを示唆しており,ストレスによる炎症様反応を標的とした新規抗うつ薬の開発を期待させる。

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© 2018 日本生物学的精神医学会
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