日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
NMDA型グルタミン酸受容体の細胞内輸送と統合失調症
武井 陽介當銘 幸貴佐々木 哲也
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 30 巻 3 号 p. 101-104

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抄録

神経伝達が効率よく行われるためには,神経伝達物質受容体やシナプス関連分子がシナプス後部・前部に輸送され集積されることが必要である。キネシンスーパーファミリータンパク(Kinesin superfamily protein:KIFs)のひとつKIF17は微小管をレールにしてNMDA型グルタミン酸受容体サブユニット2B(NR2B)をシナプスへ輸送する。KIF17による輸送はマウスの記憶・学習・神経可塑性に必須の基盤を形成し,リン酸化によるカーゴの脱着,CREBを介したKIF17の新規生合成増加などの機構により神経活動依存的に制御される。更に,微小管関連タンパクMAP1Aにより輸送がサポートされることも判明し,全体としてNMDA型グルタミン酸受容体が多段階の制御下に輸送される様子がわかりつつある。一方,統合失調症の病態,特にグルタミン酸神経伝達系の障害にKIF17が関与している可能性が死後脳および遺伝子研究から示唆されており,今後,基礎から臨床への橋渡し研究が必要とされる。

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© 2019 日本生物学的精神医学会
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