日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
神経発達障害における白質神経細胞の増加とそのモデルマウス作成の試み
久保 健一郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 30 巻 3 号 p. 108-113

詳細
抄録

統合失調症や自閉スペクトラム症などの神経発達障害が関与することが想定される精神・神経疾患において,疾患横断的に観察される脳の組織的な変化として,大脳新皮質における白質神経細胞の増加が報告されている。その要因として,発生段階における神経細胞の移動障害やサブプレートの細胞の遺残が想定されているが,まだ結論は出ていない。一方で,白質神経細胞の増加は,発生・発達期で脳への障害が生じたことを示唆する痕跡であるとともに,それ自体が病態に関与することも予想される。我々がマウスにおいて人為的に白質内の神経細胞を増やしてその影響を調べたところ,大脳新皮質における線維連絡の変化と前頭葉機能の低下が生じた。今後の研究では,動物モデルを用いた解析をさらに推進するとともに,動物モデルで得られた所見を参照しながら,実際のヒト死後脳組織を用いた解析を行っていく必要がある。

著者関連情報
© 2019 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top