抄録
わが国では現在国内の主要8ブレインバンクが連携する日本ブレインバンクネットが運営されており,今後死後脳研究が盛んになることが期待される。一方で,精神疾患の研究においては,侵襲が比較的少なく採取できる末梢組織を用いた研究も重要である。ただし末梢組織を用いた研究では,所見の意義や中枢との関連が常に問われる。本稿では筆者らが行っている血液を用いた精神疾患の分子生物学的研究(エピジェネティクス研究,トランスクリプト研究,メタボロミクス研究)について紹介するとともに,末梢血研究と死後脳研究の比較研究を紹介し考察する。両組織で得られる知見は必ずしも一致するとは限らないため,今後末梢組織を用いた研究とともに死後脳研究も盛んに行われ,両アプローチによる研究が互いに連動して精神疾患の病態解明やバイオマーカー開発が進むことが期待される。