抄録
これまでのMRI多施設共同メガスタディで,統合失調症脳病態について一般化可能性のある結果が得られるようになってきた。しかし,これらの共同研究のほとんどは欧米諸国から発信されてきた。アジア精神病MRI研究コンソーシアム(ACMP)は2018年に立ち上げ,2019年現在,14施設が参加を表明している。アジア諸国で多施設共同MRI研究を行う意義として,生物学的類似性,大きなサンプルサイズ,小さい違法薬物の影響,似た医療環境・社会学的背景,精神科医と研究者の距離の近さ,が挙げられる。予備集計では,初回エピソード精神病700名および健常対象者1,000名のT1強調画像が解析可能である見積りである。大規模データに対応して,データベースと前処理パイプライン,倫理的配慮に関する管理体制,研究者間コミュニケーションの促進を構築してきた。今後,統合失調症の生物学的基盤を新たに見いだし,バイオマーカー候補を臨床応用できることを期待している。