日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
At‐risk mental stateにおける脳形態変化:多施設共同研究
笹林 大樹高柳 陽一郎高橋 努鈴木 道雄
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 31 巻 1 号 p. 6-11

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抄録
At‐risk mental state(ARMS)を対象とした脳画像研究の報告は増えつつあり,精神病性障害への移行に先立って存在する脳形態変化の一部は将来の移行予測因子になりうる。本邦における単一施設のARMS研究は,比較的小さいサンプルサイズのために,先行研究の所見との不一致がみられ,のちに精神病性障害に移行するARMS移行群に特徴的な脳形態所見も必ずしも検出できていない。そのため,筆者らは国内4施設(富山大学,東邦大学,東北大学,および東京大学)で共同して収集した比較的大規模なARMS脳画像データセットの解析を行い,ARMS症例におけるいくつかの脳形態変化を見いだした。とりわけ,左前部帯状回の皮質厚減少および左後頭皮質の脳回過形成の所見は,ARMS移行群において顕著であった。現在,先行する欧米のコンソーシアムにも匹敵する規模のアジア圏で唯一の国際多施設共同MRI研究を準備中であり,アジア圏の臨床研究の強みを生かし,新たな知見の発見とその臨床応用への発展が期待される。
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© 2020 日本生物学的精神医学会
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