抄録
がん診療の領域などさまざまな医療現場で,ゲノムを含む生体情報に基づいて一人ひとりの身体の個体差に関する情報をもとに有効性や安全性が高いと期待される選択を可能にする個別化医療の技術開発と実装化が進んできている。東日本大震災発生の翌2012年,被災地域の医療復興の中核となるとともに,わが国における個別化医療推進の基盤となる事業として東北メディカル・メガバンク事業が立ち上がった。その15万人からなるコホート事業において,健康情報,生活習慣・環境情報などを把握し,地域への健康情報の還元と支援を行うとともに,ゲノムを含む生体情報の集積が進んでいる。本事業は,生活習慣病など幅広い健康課題の解決を見据えるが,うつ病をはじめとする精神疾患も重要な標的課題と位置づけられている。今後,本事業がわが国のさまざまな精神医学,神経科学研究と連動して有効に発展し,精神疾患の病態解明および個別化医療の確立に寄与するリソースとなることが期待される。