日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
32 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 加藤 忠史
    2021 年32 巻2 号 p. 63
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 岩本 和也, 文東 美紀, 加藤 忠史
    2021 年32 巻2 号 p. 64-67
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは,双極性障害患者前頭葉試料について,MBD2Bを利用したDNAメチル化解析により,神経細胞および非神経細胞におけるメチル化差異を示すゲノム領域を同定した。両細胞種ともプロモーター領域は全体的な低メチル化を示し,神経細胞では遺伝子特異的な高メチル化が認められた。遺伝子特異的な高メチル化の背景にはDNMT3Bの発現が背景にあると考えられた。また気分安定薬は死後脳と逆方向へメチル化変化を示すこと,双極性障害のGWAS領域に有意に集積していることを示した。
  • 梅影 創, 清水 厚志
    2021 年32 巻2 号 p. 68-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    疫学研究を進めていくうえで,バイオバンクとコホート研究の質の向上および参加者(検体)数の拡充と,大規模な情報から目的の疾患に関連する要因を見つけだすための遺伝統計学手法の開発は車の両輪の関係にある。本稿では,疫学研究を推進していくためのバイオバンクとコホート研究の現状に触れ,さらに世界最大規模の出生三世代コホートなどを運用する東北メディカル・メガバンク計画の取り組みを紹介する。次いで,疾患関連解析の最大の難問とされる「失われた遺伝率」の問題について触れ,この問題の克服をめざした手法の一つとして,いわて東北メディカル・メガバンク機構で開発したiwate polygenic model(iPGM)を利用した脳梗塞発症リスク予測について述べる。最後に,コホート研究による精神疾患リスク予測に向けたアプローチについて触れる。
  • 峯岸 直子
    2021 年32 巻2 号 p. 75-80
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    大規模な遺伝子関連解析により疾患遺伝要因の解明が進み,精神疾患も含む多くの疾患に関連する遺伝子多型/変異に,民族の多様性が大きく影響することが明らかとなった。わが国の個別化医療の実現には,日本人の試料・情報を収集するバイオバンクの活動が不可欠である。東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンクは,ゲノムコホート研究参加者15万人分の生体試料と情報を保有し,疾患例を対象とするバイオバンクジャパンやナショナルセンターバイオバンクネットワークなどと共に,わが国の代表的なバイオバンクの一つである。これらバイオバンクの試料(DNA,血清・血漿・尿,血液細胞,組織等)と情報(コホート調査情報,臨床情報,ゲノム等の解析情報等)は,ゲノムワイド関連解析,遺伝子機能解析,バイオマーカー探索,遺伝薬理学,免疫,ストレス応答,治療薬探索など,個別化医療の実現をめざした多様な研究に利用されている。
  • 高山 順, 田宮 元
    2021 年32 巻2 号 p. 81-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患をはじめとした複雑な疾患に対し,その遺伝要因はゲノム科学的手法により,環境要因は疫学的手法により,それぞれ探求されてきた。しかし,ゲノム科学は「失われた遺伝率」問題により,また疫学は小効果のリスク因子の再現性の危機により,それぞれ限界を迎えつつある。これらの限界を乗り越えると期待されるのが,前向きゲノムコホートとよばれる研究デザインである。前向きゲノムコホートでは定義された集団に対し,ゲノム情報と環境曝露情報を収集し,血液や尿などの生体サンプルを一定の品質管理のもと保管する(バイオバンキング)。また疾患発症情報や,検査値・画像・アンケート結果などの多様で多層的な中間表現型情報を前向きに取得していく。これにより,遺伝子・環境相互作用も含めた解析が可能となり,新たなリスク因子が同定されると期待される。しかしゲノムコホート研究には特有の困難が存在する。一つはp>>n問題であり,もう一つは多様で多層的な中間表現型情報から意味のある特徴量を抽出する問題である。これらの問題を解決すると期待されるのが統計的機械学習および深層学習技術である。本稿ではこれらの技術を適用した筆者らの研究例を紹介する。
  • 池田 匡志
    2021 年32 巻2 号 p. 85-88
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ゲノム医科学の進展により精神疾患を含む複雑疾患の関連遺伝子同定が相次いでいる。その中で判明した重要な事実は,頻度の高い一塩基多型(SNP)が持つ個々の効果の大きさはきわめて小さいし,逆に効果が大きいバリアントはきわめてまれということである。これらが指し示すことは,有意に関連するSNPやバリアントを同定するためには,大規模なサンプルが必要となるということにほかならない。 このため,研究の中でサンプル数を拡大する努力は必須であり,遺伝子研究コンソーシアムにサンプルを集約すること,あるいはバイオバンクなどで収集されているコホートサンプルの全ゲノム関連研究(GWAS),全エクソン・全ゲノムシーケンス研究(WES/WGS)の結果を利用することのメリットは大きい。本稿では,精神疾患の病態解明に向けて,どのような研究・解析が実施されているのかについて,遺伝子研究コンソーシアム・バイオバンクの重要性に触れながら,個別化医療という観点を折り込みながら概説していきたい。
  • 加藤 秀一, 尾崎 紀夫
    2021 年32 巻2 号 p. 89-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患の当事者・家族の,精神医学研究に対する「根本的治療薬を」との期待は強い。しかし,精神疾患の病態に基づいた診断・治療法は未だ見いだされていない。ゲノム解析研究を起点に,疾患の分子・細胞・神経回路・脳・個体の各レベルで生じる表現型・機能異常を同定し,包括的に病態を明らかにして,病態に基づく診断法・根本的治療薬を開発することが強く求められており,知見が積み重ねられている。さらに開発を推進していくには,多施設共同かつ診療科横断的・疾患横断的にゲノム情報を集約するため,臨床情報を具備した患者由来バイオリソースの基盤構築が不可欠である。①スケールメリットを活かすための情報集約,②データサイエンスの実装,③データシェアリングの推進,④サステナビリティの実現をめざし,各種倫理指針を遵守しながら精神神経疾患の医療の充実,研究を推進するための組織として,精神・神経ゲノム情報管理センターの設立が求められている。
  • 富田 博秋
    2021 年32 巻2 号 p. 94-98
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    がん診療の領域などさまざまな医療現場で,ゲノムを含む生体情報に基づいて一人ひとりの身体の個体差に関する情報をもとに有効性や安全性が高いと期待される選択を可能にする個別化医療の技術開発と実装化が進んできている。東日本大震災発生の翌2012年,被災地域の医療復興の中核となるとともに,わが国における個別化医療推進の基盤となる事業として東北メディカル・メガバンク事業が立ち上がった。その15万人からなるコホート事業において,健康情報,生活習慣・環境情報などを把握し,地域への健康情報の還元と支援を行うとともに,ゲノムを含む生体情報の集積が進んでいる。本事業は,生活習慣病など幅広い健康課題の解決を見据えるが,うつ病をはじめとする精神疾患も重要な標的課題と位置づけられている。今後,本事業がわが国のさまざまな精神医学,神経科学研究と連動して有効に発展し,精神疾患の病態解明および個別化医療の確立に寄与するリソースとなることが期待される。
  • 大塚 郁夫
    2021 年32 巻2 号 p. 99-100
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 佐々木 哲也, 武井 陽介
    2021 年32 巻2 号 p. 101-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ヘルパーT細胞サブセットであるTh17細胞による免疫反応は,自閉スペクトラム症,統合失調症,うつ病などの病態生理に関与することが臨床研究から示されている。これらの疾患では中枢神経系の構造異常がみられるが,Th17細胞とIL‐17Aの寄与については不明である。本研究では,血清中のIL‐17A濃度が恒常的高値を示す遺伝子改変動物の脳の解析を行い,海馬歯状回でミクログリア活性状態の低下と密度の減少を見いだした。
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