抄録
慢性ストレスが認知・感情に悪影響を及ぼし,うつ病を含むさまざまな精神疾患を引き起こすメカニズムの一環として,糖質コルチコイドが中心的な役割を果たすことが提唱されている。一方,運動や身体活動が精神的ストレスと同様に糖質コルチコイドを上昇させるが,メンタルヘルス促進効果・認知向上効果を有する。本稿ではこのThe Exercise‐Glucocorticoid Paradoxに関するエビデンスを紹介し,その解釈を1)新たなストレッサーに対するHPA系の感受性,2)糖質コルチコイド受容体,3)内側前頭前野におけるドーパミンの観点から考察する。そのうえで,ストレス対応における糖質コルチコイドの役割や慢性ストレス・うつ病の病態生理を再検討する。