2022 年 33 巻 4 号 p. 155-159
セロトニン再取り込み阻害薬を代表とするセロトニン関連薬は精神疾患の治療薬として幅広く用いられているが,治療効果が不十分なうえにしばしば深刻な副作用を伴い,作用機序も不明瞭である。その理由の1つとしては,これまでの研究は神経毒破壊や薬理学的方法を用いてきたために,二次的効果や代償効果,非選択的効果の可能性を否定できなかったことが考えられる。しかし,近年発展著しい光遺伝学とゲノム編集技術によって,上記の問題は理論上回避可能になった。本稿ではこれらの技術を用いて,うつ病とその治療にかかわるセロトニン神経経路の解明に取り組んできた筆者らの研究例を紹介する。