抄録
生物医学研究ではゲノム変異などの病因を動物モデルで再現し,この動物モデルで病態を解明することで,新規診断手法や治療薬開発をするというのが定石である。しかし,統合失調症をはじめとした精神疾患のゲノム研究からほとんどの精神疾患は少数のゲノム変異で今のところ説明できず,単純にこのアプローチをとるのは難しいことがわかってきている。また臨床研究で多様な環境因子が同定されているが,環境因子の動物モデルへの翻訳はゲノム変異のように明瞭ではない。一方,モノアミンは薬物療法の標的でありその重要性・関与は明らかであるが,意外にも多様なモノアミンが多様な受容体に対してどのように作用して脳機能を調節しているのか基本的なことがよくわかっていない。このような状況で動物モデル研究を進めるには,精神疾患の症状が生じる神経回路・分子シナプス細胞機序をモノアミンを基軸に明らかにし,このような神経基盤が遺伝環境要因によりどのように影響を受けるのかを探索することで突破口がみえてくるものと考えている。