抄録
中枢ドーパミン(DA)神経の機能異常と関連する疾患には,パーキンソン病,レストレスレッグス症候群,トゥレット症候群,注意欠如多動症(ADHD),覚醒剤その他の物質依存症,精神作用物質使用による精神病その他,統合失調症以外にも数多くの疾患が挙げられる。本稿では,筆者らが過去に手掛けたパーキンソン病,ADHD,物質依存症,統合失調症の症状モデルを用いた基礎研究を紹介し,統合失調症のドーパミン仮説を再考する。これらのDA関連疾患を概観すると,それぞれの疾患の症状が,DA活性の高低だけでは規定できない多様なものであることがわかる。この傾向は,取りも直さずDA神経機能異常と各DA関連疾患との疾患特異性の低さを物語っているものと考える。