抄録
平衡性は高齢者の転倒と転倒不安を説明・予測する主要因子である。しかし,代表的な平衡性検査である片脚立位検査が認知機能とどのように関連するかは,十分に明らかになっていない。本研究の目的は,認知機能として身体表象操作に焦点を当て,身体表象の想起と変形がどのように測定されるのかという観点から、開眼片脚立位検査の特徴を示すことであった。68 名の健康な高齢者(60–86 歳;平均 70.91 ± 5.81 歳,男 30 名)に対し,開眼片脚立位姿勢もしくは対照条件である閉眼両脚立位姿勢を求め,それぞれの重心動揺の距離や面積を計測した。また,ビデオゲーム形式の身体表象操作検査を行い,身体表象の想起もしくは変形に要する反応時間を測定した。立位検査における重心動揺と身体表象操作検査における反応時間との相関係数から,開眼片脚立位検査における重心動揺の外周面積には身体表象の変形が(r=.339, p<.01),閉眼両脚立位における重心動揺の総軌跡長には身体表象の想起が(r=.399, p<.01)関与することが示された。この傾向は,足蹠形状の影響を除いた偏相関でも変わらなかった。そのため,開眼片脚立位検査に身体表象の変形操作が含まれると結論した。今後は,片脚立位検査の効果的で統一的な検査手法を確立するとともに,他の立位検査とバッテリー化を図ることで,高齢者の運動・認知の両面に対するより正確なスクリーニングを可能とすることが期待される。