抄録
人口の高齢化は世界的な課題であり,我が国の高齢化率は2024 年時点で29.3%と世界で最も高い。人口の高齢化に伴い日常生活にサポートを必要とする高齢者も増加しており高齢者向け居住施設の利用者はこの20年間で約3 倍に増加している。高齢者の多くは複数の慢性疾患に対して薬物療法を受けており,高齢者施設入所者においては,60~80%の入所者がポリファーマシー(5 剤以上の薬剤の併用)の状況にあると報告されている。ポリファーマシーは薬剤性有害事象(Adverse Drug Event, ADE)や薬剤関連エラー(Medication Error, ME),および潜在的に不適切な薬剤(Potentially Inappropriate Medications, PIM)のリスクを増加させることから,高齢者施設における不要なポリファーマシーの解消は医療安全上の重要な課題である。本稿では高齢者施設における薬物療法を中心に,高齢者に対する薬物療法の安全性を高めるための基本的理解を論じるとともに,筆者らが実施中の本領域における研究を紹介する。