児童青年精神医学とその近接領域
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研究資料
自閉スペクトラム症児童の不安に対する集団認知行動療法プログラムの開発
─実施可能性に関する予備的検討─
野中 俊介岡島 純子三宅 篤子小原 由香荻野 和雄原口 英之山口 穂菜美石飛 信高橋 秀俊石川 信一神尾 陽子
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2017 年 58 巻 2 号 p. 261-277

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抄録

【背景】自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)児の不安症状に対する認知行動療法の有効性はこれまで示されているが,教師が学校で実施できるプログラムはまだ確立されていない。

【目的】ASD児向けの小学校で実施可能な不安軽減プログラムを開発し,まず小集団での実施可能性を検討し(研究1),次に学校で教師が実施可能かどうかを検討する(研究2)。

【方法】ASDの認知特性を考慮して認知的および行動的介入を含むプログラム10回分を開発し,ASDを有する男児3名(8~11歳)の集団に対して臨床心理士が実施し,出席率や親の報告によって実施可能性を検討した(研究1)。次いで,小学校通級指導教室において教師によるプログラム実施の忠実性を調べ,5年生男児3名には事後に理解度を,そして児童と担任教師の両者には事後に社会的妥当性に関する質問に回答してもらった(研究2)。

【結果】研究1では100%の出席率と肯定的な感想が得られた。研究2では,高い忠実性が確認され,児童の理解度は終了後3カ月時点でも高い水準で維持されていた。児童,教師による社会的妥当性の回答はおおむね良好であったが,授業の準備にかかる教師への負担が大きいことが示唆された。

【結論】同プログラムはASD児に理解可能で集団参加が可能であり,教師が事前研修とサポートがあれば実施可能であることが確認された。今後は,同プログラムのASD児の不安軽減に対する有効性が検証される必要がある。

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© 2017 一般社団法人 日本児童青年精神医学会
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