児童青年精神医学とその近接領域
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58 巻 , 2 号
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特集 限局性学習症(学習障害)(Ⅰ)
  • 稲垣 真澄, 米田 れい子
    2017 年 58 巻 2 号 p. 205-216
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    限局性学習症/学習障害(learning disorder/specific learning disorder; LD)は全般的知能が正常で, 学習意欲があるにもかかわらず, 「読字」「書字」や「算数」などの特定領域の獲得が障害され, 学業, 日常生活, あるいは職場で著しい支障をきたす発達障害の一つである。中枢神経系の機能異常によるとされ, 近年脳機能画像による解析も試みられている。

    本稿は, 代表的LDである「発達性読み書き障害」と, 「算数障害」について, それぞれの概念, 診断につながる臨床症状の診かた, わが国で使用可能な検査と診断手順について解説した。前者では問診におけるチェックリストの活用, ひらがな音読検査での読みの評価が, 後者では KABC-Ⅱの習得度評価が役にたつ。

    的確な教育的支援のために医療サイドができることは, 言語発達に関する詳細な問診, 神経学的診察, 知能評価, 読み書き・算数の基本的能力や子どものもつ認知特性の評価を行うことであると考えた。

  • 関 あゆみ
    2017 年 58 巻 2 号 p. 217-226
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    「限局性学習症/学習障害」は,読み・書き・計算といった基本的な学業的技能の習得に関わる認知機能の障害であり,その背景として先天的な脳機能異常が推定されている。限局性学習症・学習障害の脳機能計測として用いられる方法としては,機能的MRIやPETなどの脳機能画像検査,事象関連電位(ERP)や脳磁図(MEG)などの神経生理学検査,脳容量計測や拡散テンソル画像(DTI)を用いた構造画像検査が挙げられる。本稿ではこのうち,読字障害(発達性ディスレクシア),算数障害(計算障害)について,近年の研究を紹介する。

    近年の脳機能画像研究の結果は,限局性学習症/学習障害の背景には皮質機能の特殊化の異常があることを示唆しており,発達性ディスレクシアでは左紡錘状回のVisual word form area,計算障害では両側頭頂間溝が一番の責任領域と考えられる。しかし,なぜ,皮質機能の特殊化が障害されるのか,その要因については明らかではない。今後は乳幼児期からの縦断研究やその他の画像検査や神経生理検査を組み合わせた研究が必要と考えられる。

  • 小池 敏英, 中 知華穂
    2017 年 58 巻 2 号 p. 227-235
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    本論文は,英語圏LDと日本語圏LDにおける音韻処理と言語性短期記憶について論じた。読み年齢をマッチさせた研究や,追跡研究の結果から,英語圏の読み書き障害には,音韻意識が強く関与することが報告された。また,言語性短期記憶は,音韻意識と結合し,音の保持と適切な文字とのマッチングを可能にすることによって,非単語の読み書きの達成に関与する知見が報告された。聴覚呈示された記憶材料が音韻的に類似した場合に,短期記憶の成績が低下する現象(音韻類似性効果)について,読み書き障害で検討された。その結果,読み書き障害において音韻的符号化は発達的変化を示すことが報告された。また,3種の課題(異なる韻の短い単語,同じ韻の短い単語,異なる韻の長い単語)についての正答率を系列位置曲線で比較検討した。読み書き障害は,第5番目と第6番目の項目は,音韻類似性効果と語長効果を示さなかった。これより,累積的リハーサルに含まれる項目数が多くなると,音韻的符号に基づく累積的リハーサルが困難になることが推測された。日本語圏読み書き障害の内,ひらがな読み障害の程度には,音韻処理の不全が関与した。漢字の読み書き障害には,言語性短期記憶の不全が関与した。先行研究の知見から,英語圏と日本語圏の読み書き障害では,音韻意識の不全が共通して関与するが,言語性短期記憶の関与の仕方は,両言語圏の読み書き障害で同じでないことを指摘できる。

  • 岡 牧郎
    2017 年 58 巻 2 号 p. 236-245
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)においては,行動や情緒の問題が注目されがちであるが,これらに加えてしばしば学習困難を伴う。その中にはLDが含まれており,ASDには約26%,ADHDには30~40%の頻度でLDが高率に併存するという報告もある。

    ASD児やADHD児の行動や情緒の問題の背景には,学習困難が深く関与していることがある。この場合は,学習困難に対する適切な支援がなされることで,行動や情緒の問題が改善される可能性がある。外面的な問題にとらわれず,ASDやADHDにはLDが併存している可能性を考えて,常に学習の評価を行うことが望ましい。

    ASDやADHDを併存するLDの病態には,一般的なLD同様に音韻処理能力の障害が存在すると考えられる。その他,実行機能の障害やワーキングメモリの障害などが存在すると考えられ,一般的なLDと比べて異なる認知特性も有する可能性がある。

    これらの子どもへの教育的支援は,一般的なLDと同等と考えてよいが,加えてASDやADHDのそれぞれの特性に配慮する必要がある。なお,ADHD併存例においては不注意が学力向上の大きな妨げになるため,積極的にADHDの薬物治療を行うことが望ましい。

  • 若宮 英司
    2017 年 58 巻 2 号 p. 246-253
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    LDは学習の基礎技能(読み,書き,計算,算数的推論),DCDは協調運動が特異的に障害される神経発達障害で,視覚情報処理障害は現在のところ対応する診断名がない。この3つは合併することも多く,それぞれ学習に対してネガティブに影響する。不注意など他の障害も含めて学習困難の独立した要因として認識しておくこと,学習困難の訴えがどの要素に起因するのか判別することが援助の第一歩となる。DCDと視覚情報処理障害の概要と,その学習への影響,LDとの関係を概説した。

症例研究
  • 武田 知也, 濱谷 沙世, 田丸 麻衣, 境 泉洋, 友竹 正人, 大森 哲郎
    2017 年 58 巻 2 号 p. 254-260
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    心因性難聴に対する認知行動療法的介入の報告は少ない。本報告では,認知行動療法的介入が心因性難聴の改善にどのように寄与したかを検討することを目的とする。

    患者は10代後半の男性。出生発育に異常を指摘されたことは無い。中学校入学頃より難聴が目立つようになった。高校入学後,家庭と学校の両方で自発的な発語が減少していった。その後耳鼻科を受診し,心因性難聴と診断された。患者の難聴は,音は聞こえるが途中でことばがぼやけて何を言っているか分からなくなることであり,初対面で不安・緊張が喚起され難聴になる場合と会話の最中に不安・緊張から難聴が生じる場合の2つの状況が認められた。そこで緊張場面からの回避を防ぎ,難聴時の困惑表情の代替行動として聞き返しを強化することとした。認知行動療法的介入の結果,聞こえなかったらどうしようという認知が,分からなくても聞き返せばいいんだという適応的な認知に変容したことにより,緊張場面に対する予期不安が減少し,緊張場面での聞き返しが増加した。それに伴って,主観的な聞こえの改善とともに友人と遊びに出かけるなどの社会的活動が増加した。

    本事例より,不安・緊張に伴い難聴が生じている場合には,認知行動療法的介入が有効である可能性が示唆された。

研究資料
  • 野中 俊介, 岡島 純子, 三宅 篤子, 小原 由香, 荻野 和雄, 原口 英之, 山口 穂菜美, 石飛 信, 高橋 秀俊, 石川 信一, ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 261-277
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    【背景】自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)児の不安症状に対する認知行動療法の有効性はこれまで示されているが,教師が学校で実施できるプログラムはまだ確立されていない。

    【目的】ASD児向けの小学校で実施可能な不安軽減プログラムを開発し,まず小集団での実施可能性を検討し(研究1),次に学校で教師が実施可能かどうかを検討する(研究2)。

    【方法】ASDの認知特性を考慮して認知的および行動的介入を含むプログラム10回分を開発し,ASDを有する男児3名(8~11歳)の集団に対して臨床心理士が実施し,出席率や親の報告によって実施可能性を検討した(研究1)。次いで,小学校通級指導教室において教師によるプログラム実施の忠実性を調べ,5年生男児3名には事後に理解度を,そして児童と担任教師の両者には事後に社会的妥当性に関する質問に回答してもらった(研究2)。

    【結果】研究1では100%の出席率と肯定的な感想が得られた。研究2では,高い忠実性が確認され,児童の理解度は終了後3カ月時点でも高い水準で維持されていた。児童,教師による社会的妥当性の回答はおおむね良好であったが,授業の準備にかかる教師への負担が大きいことが示唆された。

    【結論】同プログラムはASD児に理解可能で集団参加が可能であり,教師が事前研修とサポートがあれば実施可能であることが確認された。今後は,同プログラムのASD児の不安軽減に対する有効性が検証される必要がある。

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