児童青年精神医学とその近接領域
Online ISSN : 2424-1652
Print ISSN : 0289-0968
ISSN-L : 0289-0968
研究資料
不登校症例の後方視的調査から考える児童思春期デイケアの役割
木下 弘基奥山 玲子河合 健彦鎌田 隼輔
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 58 巻 3 号 p. 398-408

詳細
抄録

【目的】本研究では,児童思春期デイケアの不登校症例の実態および,学校復帰率,GAF,中学卒業後の進路を指標とした予後について調査・検討し,児童思春期デイケアの役割について考察することを目的とした。

【方法】不登校を主訴に児童精神科外来児童思春期デイケアを利用した9~15歳の症例32例(男子22例,女子10例。小学生7例,中学生25例)を対象に後方視的な診療録調査を行った。

【結果と考察】全32例中,発達障害圏に診断される症例が21例(65.6%)と最も多かった。デイケア開始時年齢は,平均は13歳2カ月であり,中1ギャップとの関連がうかがわれた。治療経過(デイケア利用経過)より分類された4群の比較から,デイケアの利用を継続できた群は学校復帰率,GAF,高校進学率が高く,予後が良好であると考えられた。対して,デイケアを中断した群は予後が悪く,青年期のひきこもりにつながる可能性も示唆された。本研究から児童思春期デイケアの役割として,①危機状態に陥った際の一時避難所,②安心できる居場所,③外界へ挑戦する際の安全基地の3点が考えられた。デイケアを利用することによって,子どもたちは危機状態から一時避難所を利用し,安心できる居場所を得,仲間と交流し活力を取り戻していき,再登校など外界へのチャレンジをしたり,進路と向き合ったりするようになると考えられた。不登校児への支援の場として児童思春期デイケアは有効と考えられるが,中断例への支援が課題として考えられた。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本児童青年精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top