2018 年 59 巻 5 号 p. 566-576
知的障害と発達障害のトランジションについて述べるために,成人期の適応に強い影響を及ぼし得る,愛着の問題,教育の枠組み,自閉症スペクトラム障害 (ASD) における過剰適応の問題を中心に,学齢期から成人期における医療の役割を論じた。それぞれに特徴的な精神症状がみられ,これら精神症状が認められたケースを中心に,学齢期の早期に精神科医療へ移行することが望ましいと考えられた。ただし,現実的には知的障害や発達障害の対応に精通した精神科医は多くはなく,移行の時期は地域の医療資源に左右されざるを得ないと結論付けられた。学齢期以降の精神症状が成人以降の精神疾患に関連することもあるため,児童精神科医や小児科医と成人期を担う精神科医とが症例検討などを通して精神症状を共有することは,トランジションを円滑に進めるだけではなく,精神疾患の予防に寄与する可能性がある。