2018 年 59 巻 5 号 p. 577-587
子どもから大人への移行期は,身体的にも社会的にも大きく変化することで精神保健や社会適応のリスクが高く,特に支援ニーズが高い時期であるが,社会的養護からの自立は家族や親族による支援がないだけでなく,貧困や児童虐待などの逆境体験の影響もあり,とりわけ支援ニーズが高い。現在では社会的養護児童の高校進学が一般的になったが,大学進学率は12.4%と低く,高校卒業後に就職するのが標準的な進路となっており,一般家庭の子どもよりも早期かつ短期的な移行が求められている。移行期の支援ニーズが高いにもかかわらず,15歳から20歳にかけては児童福祉や児童精神科医療には支援の実質的な空白がある。多様なニーズに対応するためには必然的に多分野の連携が必要になるが,事実上の義務教育となっている高校教育は15歳から18歳までの移行支援の場として合理性と優位性があり,社会的養護からの移行支援にも役立つことが期待されている。思春期の移行支援は現在の症状の緩和だけにとどまらず,成人後の社会適応や健康にも大きな影響を与えるものであることからも,なお一層の充実が求められる。