2019 年 60 巻 2 号 p. 169-179
行動嗜癖が注目されており,食物嗜癖でも他の嗜癖と同様の報酬系や前頭前皮質の機能低下が指摘されている。しかし,食物嗜癖が関連するのは摂食障害のなかで肥満恐怖を有さず肥満に至ることが多い過食性障害に限られることがほとんどで,数ある摂食障害の病因論の1つに過ぎない。一方で,摂食障害の実臨床におけるパーソナリティ障害の併存率は想像以上に高率である。児童青年期では摂食障害を外在化(医療化)して毅然と接することで,早期に仲間関係に戻すことができ,親密な仲間関係のなかでパーソナリティの自然な成長が得られる可能性がある。一方で,既に青年期特有の親密な仲間関係から退却している場合,神経症圏に診断横断的に存する2つのプロトタイプに基づくスペクトラム,境界性パーソナリティ障害スペクトラム-多衝動性,社交不安スペクトラム障害-回避性パーソナリティ障害に基づき,前者には気分安定薬・第二世代抗精神病薬・力動的精神療法・弁証法的行動療法,後者には選択的セロトニン再取り込み阻害薬・認知行動療法など,生きづらさ(人格の病理)への積極的な治療介入が必要である。