抄録
以前には, 動脈硬化は高脂血症に伴い, コレステロールなどが血管壁に沈着することで発症するものと信じられてきた。従って, 種々のコレステロール低下療法が積極的になされてきた。中でも, HMG-CoA還元酵素阻害薬 (通称スタチン) は, 他の治療法と同程度にコレステロールを低下させても, 心血管系イベント抑制効果で最も優れていることが明らかにされた。つまり, スタチンにはコレステロール減少効果を超えた多面的動脈硬化治療効果があるものと考えられ, そのメカニズムについて精力的に探求されている。その結果, コレステロール合成系のHMG-CoA還元酵素関与点以降で, 酸化ストレスなど動脈硬化形成プロセスに関与するシグナルを伝達する低分子G蛋白のRho, Ras, Racなどを成熟型にする脂肪付加 (プレニル化) をする中間代謝産物があり, それがスタチンで減少する。プレニル化によって, G蛋白は, その本来の作用が発揮でき, それぞれの持ち場に着くことができる。だから, スタチンはコレステロール減少効果とは別に抗動脈硬化作用を発揮しているものと考えられている。これを裏付けるように, スタチンはコレステロールが低い症例においても抗動脈硬化作用が同等にあるので, 心血管系リスクの高い患者ではコレステロール値に拘わらずスタチンの使用を推奨する論文が散見される。その他にも, 骨折, 認知症, 発癌などとの関係も指摘されているが, 現時点では結論に達せず, 今後の大規模臨床試験での成果が待たれる。