臨床化学
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多機能性蛋白YB-1-翻訳調節とノックアウトマウス
内海 健
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2007 年 36 巻 4 号 p. 296-302

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抄録

Y-box結合蛋白 (YB-1) は進化の過程において非常に保存された核酸結合部位 (CSD) をもつ蛋白でありcold shock domain (CSD) 蛋白スーパーファミリーに属する。哺乳類のYB-1 は, 種々のストレス応答, 細胞増殖に関与する転写, 翻訳を制御すると考えられている。臨床サンプルを用いた研究から, YB-1の発現の量は腫瘍の増殖予後に相関していることが, 乳がん, 卵巣がん, 肺がんで報告されている。YB-1はRNAとの結合を通して翻訳を制御していることより, YB-1はmRNAの安定化, 翻訳調節の中心的な役割を担う。YB-1ノックアウトマウスは胎生致死を示し, 脳ヘルニアを示す例が多く見られた。これは神経細胞の増殖低下と細胞形態の異常によるものと考えられる。ここではYB-1のDNA-RNAとの結合, 蛋白-蛋白結合を介しての, YB-1の多機能性について述べてみたいと思う。

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