2020 年 1 巻 J1 号 p. 117-121
鉄筋コンクリート(RC)構造物では,塩害などの外的作用により鉄筋腐食が発生し,その後,腐食生成物の膨張圧により腐食ひび割れが表れる.腐食ひび割れを有するRC構造物は,耐荷力の深刻な低下が懸念され,現有性能を精緻に評価する必要がある.一方,腐食ひび割れ幅と鉄筋腐食量の関係には大きなばらつきが存在し,腐食ひび割れ幅から実験式に基づいて予測される鉄筋腐食量の精度は極めて低い.本研究では,Long Short-Term Memory(LSTM)と既往の実験結果,さらには有限要素解析を用いることで,腐食ひび割れ幅からRC部材内部で生じ得る鉄筋腐食分布群の作成を可能にした.ケーススタディとして,腐食ひび割れ幅の情報からMonte Carlo法により対象RCはりの残存耐荷力の確率密度分布を試算した.