AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
1 巻, J1 号
選択された号の論文の78件中1~50を表示しています
  • 西川 和廣
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 1-8
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    インフラメンテナンス分野へのAIの導入は,今や避けることのできない少子化による担い手不足解消の切り札として期待されている.筆者が土木研究所で取り組んでいる道路橋メンテナンスサイクルへのAIの導入も,このような流れの中で始まったものであるが,橋のメンテナンスをシステム化することの意味について,改めて考え直す機会ともなった.システムの構築は未だ途上ではあるが,本稿は,AIによる道路橋の「診断」を中心としたシステムの選定と構築に向けての様々な検討の過程について,筆者が長年積み重ねてきた道路橋の維持管理に関する研究および経験を交えながら,中間報告として述べるものである.

  • 全 邦釘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 9-15
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,ディープラーニングに代表される人工知能技術が急速に発展してきており,様々な分野において活用がなされはじめ,またその性能・威力について知られてきている.特にディープラーニング技術に代表される教師あり機械学習技術の発展がめざましく,土木工学分野での活用が期待されているが,しかし他分野と比較しても実用化が着実に進んでいるとは言い難い.本稿は,土木工学分野として今後取り組むことが望ましいと考えられる分野について方向性を示すために,インフラ維持管理分野を例として,特にデータに着目し,データの統合・蓄積のためのデータプラットフォーム,データ収集のための計測自動化,データと知識との連携方法について,展望を述べたものである.

  • 土橋 浩, 長田 隆信
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 17-24
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,インフラメンテナンスの分野においても,ICT,AIなどを活用した維持管理の効率化,高度化の取り組みが進められている.特に,i-Constructionでは,調査・設計から施工,維持管理のあらゆるフェーズで ICTを導入することにより,生産性の向上を目指している.このため,各フェーズの各種データをシームレスに統.し,一元管理するデータプラットフォームの構築が求められている.

    本論文では,首都高速道路で実装しているインフラデータプラットフォーム(i-DREAMs®)について述べる.また,当該プラットフォームの CIMとの親和性,災害時など異常時の情報を統合・管理する総.防災情報システムへの進化,他システムへの拡張性などについて述べる.

  • 湧田 雄基, 猪村 元, 石川 雄章
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 25-34
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,インフラマネジメント分野におけるデータサイエンスのプロセスについて紹介し,個々のプロセスにおいて必要となる分析手法や,分析結果の解釈の視点,業務改善効果の評価の視点について述べる.こうしたデータサイエンスの結果をインフラマネジメント業務に活用する事例整理結果を示す.また,多種多様なデータの迅速な利活用を実現するデータ利活用基盤について,システムアーキテクチャ,データの事前処理,データ利用時の問合せ処理について述べる.昀後に,構築したデータ利活用基盤を活用したデータ可視化,分析,データサイエンス試行の高速化の事例についても触れる.

  • 天方 匡純, 藤井 純一郎, 吉田 龍人
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 35-40
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    土木技術者の真骨頂は,限られた部分集合の情報から技術体系を作り上げ,十分な機能の施設等を社会に提供することである.ところが,それらの選択的情報は暗黙知になりやすく,社会全体での汎用化や次世代継承を目指す際の障害となる.一方,様々な分野で活用が進むAI(artificial intelligence)の一種である深層学習技術は,従来考えられなかった大量の現場情報を抜き出すことができ,形式知化による作業の効率化・生産性向上に繋がると考えられる.しかし,情報取得精度のみで比較すると深層学習技術が人に及ばないこともある.人主体の従来フローに AIを直接代替させる試みだと,人の成果との違いが問題となりAI導入を遅らせる原因になりそうである.本稿では円滑にAIを導入するための留意点を述べる.

  • 杉崎 光一, 阿部 雅人
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 41-47
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    AIが導入されることにより業務や働き方に変化が起こると考えられている.例えば,工場における検査が画像認識技術を利用して代替される,また,Q&Aなどのコールセンター業務がチャットボット的な支援を利用して効率化されるなどが言われている.土木構造物の維持管理で言えば,点検における目視検査がドローンで代替されるなどの論点がよく言われている.これらの論点は,AI技術が導入されることでいかに生産性を向上できるかという論点であると言える.しかし,AIの導入は既存の業務を代替するだけでなく,変化するものは,「業務」「業務範囲」「業務効率・生産性」「仕事に対する意欲」など多様であると想定されている.本研究では,AIの導入によりインフラ維持管理業務がどのように改革されるかのコンセプトについて整理するものである.

  • 木暮 繁, 坂本 勝哉
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 48-56
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は, 国家プロジェクトのビジネス化について, 内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を有する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において理化学研究所を中心とした研究開発チームがこれまでに受託した2つのテーマ, インフラ領域「レーザーを活用した高性能・非破壊劣化インフラ診断技術の研究開発」, AIビッグデータ領域「インフラ領域における職人の技の伝承教育と機器実装の研究開発」の社会実装いわゆるビジネス化について述べる. 大学・国立研究所発のベンチャー設立と事業化では, 対象となる事業分野や技術の特性を分析し, 大学・国立研究所の持っている事業企画能力の優位性や欠点を理解した上で, 新規市場参入のための既存大手企業群との対等な関係に向けた事業戦略が重要であることを示す. このような事業戦略を推進するためには,複数の機関の意図を統合可能な中立の事業企画者の存在が重要となる.

  • 長谷 俊彦, 岩生 知樹, 岩立 次郎, 須藤 明人
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 57-62
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国において重要な社会インフラである高速道路は,ストックが膨大であり,点検業務における生産性の向上が課題となっている.そのため,構造物における健全性の診断にAI技術を活用した研究等が行われている.これらの成果を活用しながら,さらに生産性向上を進めるための方策として,得られた診断結果に対し,対策の優先順位を設定できる仕組みの構築が有効と考えられる.その一案として,定期点検から得られるような「劣化」「損傷」「初期欠陥」によって低下した健全度と,「劣化」のみによって低下した場合における健全度を比較することで,構造物で個体差のある「損傷」「初期欠陥」の有無を抽出する仕組みの可能性について検討を行った.

  • 龍田 斉, 横山 広, 永見 武司, 桝谷 浩, 近田 康夫, 山田 宗明
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 63-70
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    データ分析のコンペティションでは機械学習技術の1種である勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree,以下GBDT)が精度・計算速度ともに優れており,よく利用されている.本研究では,地方自治体に所属する道路管理者の補修工法選定の意思決定補助を目的として,橋梁管理システムによって記録された橋梁管理カルテ情報から損傷原因および補修工法の推定にGBDTが活用できるか検証した.検証の結果,GBDTはいずれのモデルも橋梁管理カルテデータから高い精度で損傷原因や対策区分を推定可能であることを確認した.また,学習後のモデルから説明変数の重要度やSHAP値を算出し,諸元が損傷原因や補修補強工法に与える影響を分析することにより,モデルの妥当性を確認した.

  • 山根 達郎, 全 邦釘, 本田 利器
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 71-77
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁点検の記録としてこれまでに膨大な点検調書が作成されているが,その多くが紙媒体やPDF形式で保存されており,蓄積されたデータの利活用を困難にしている.点検調書から自動的にデータを抽出し,点検記録のデータベースなどを構築できれば,過去の膨大な点検記録に基づいたデータ分析などが可能になると考えられる.しかし,損傷部材の位置などを知るために重要な情報である部材要素番号などは,橋梁図面内の構造部材の線と重なっているものも多く,一般的なOCR処理では抽出が難しい.本研究では,点検調書内の橋梁図面に記載されている要素番号について,Deep Learningによる物体検出を活用して抽出を行った.その結果,直線と重なっている要素番号であっても精度良く抽出できることが確認できた.

  • 藤本 一輝, 河村 圭, 澤村 修司
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 78-85
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    山口県では,道路施設の定期点検による点検データの増大が見込まれており,データ管理の効率化が求められている.また,国が策定した電子行政オープンデータ戦略等により,国や地方公共団体などが保有する公共データの活用を促進するための取組に速やかに着手し,国民がインターネット等を通じて容易に利用できるよう措置を講じることが義務付けられた.しかし,現状では点検データは整理されておらず,データをそのまま活用できない.そこで,著者らは山口県の橋梁定期点検データを対象として,保存されたデータから,ファイル名が間違っているファイルや,不足しているファイルを表示するシステムを開発し,オープンデータ等にする際にデータクリーニングを行うことの重要性を示した.また,APIを作成し,オープンデータ化するための実装例を示した.

  • 大関 誠, 堀田 修平, 與那覇 誠, 山口 浩平, 中村 聖三
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 86-91
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁定期点検における点検診断員の不足や維持管理コストの増加に対処するために,AI技術を活用した点検の効率化が進められている.現状の点検業務の効率化を支援するためには,点検マニュアルが対象としている様々な損傷の種類・評価基準に対応した汎用的な AIモデルが求められる.本研究では,汎用的かつ高精度な損傷程度評価モデルを構築するために,損傷程度評価と関連性が高い損傷分類とのマルチタスク学習を提案した.一般的なマルチタスク学習に加えて,注意機構を用いてタスク間の関連性を明示的に考慮可能なマルチタスク学習手法を提案し,長崎県の橋梁維持管理データを用いて提案手法の有効性を検証した.

  • 西尾 真由子, 栗栖 雄一
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 92-99
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    現行の橋梁定期点検では,技術者が点検要領に従って部材毎に目視で損傷度を判定しているが,これを AI技術で代替できれば持続可能な点検システムの実現が期待できる.ただし, AIによるシステムが実社会で活用されるには,その AIの判断根拠を明らかにして人々に受容される必要がある.本研究では,橋梁部材画像から損傷度判定を行う畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を構築し,それに Grad-CAMを適用してCNNの判断根拠を可視化した.データ画像におけるCNNと人の判断根拠の整合を調べ, CNNの判断根拠の傾向を考察できた.さらに,CNNと人で判断根拠が整合した画像を訓練データとして再構成して CNNを構築すると,その判定性能を向上させられる可能性を示し, Grad-CAMによる判断根拠の可視化が CNNによる部材損傷度判定の検証と改良,そして受容の促進に有効であることを示した。

  • 南 貴大, 福岡 知隆, 藤生 慎
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 100-108
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の老朽化が進んでいる中.近接目視による定期点検が行われている.しかし,財源・人材・技術力の不足により,近接目視点検を継続的に行うことは困難である.そのような中,効率化に向けて画像の活用が期待されており,画像認識・画像処理による損傷の検出に関する研究がなされている.しかし,損傷の自動検出までに留まっており,維持管理計画を立てる上で必要な対策区分の診断の自動化までは行われていない.本研究では,過去の点検結果における損傷図からパターンマッチングなどの画像解析を用いて損傷の特徴量を抽出する手法の提案を行った.また抽出した損傷の特徴量を用いて,対策区分の診断結果を分類するモデルを決定木分析によって構築し,ランダムフォレストによって分類に影響を与える要因の重要度を明らかにした.

  • 大澤 捷瑛, 三好 崇夫, 全 邦釘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 109-116
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    土木構造物への活用が期待されているリーン二相系ステンレス鋼(LDSS)は,ラウンドハウス型の応力-ひずみ曲線を有するため,LDSS構造物の耐荷力解析では,その応力-ひずみ曲線が精度よく表現できる構成式が求められる.著者らは構成式としてMRO曲線を提案している.しかし,MRO曲線の記述には,一般的な材料規格やミルシートに与えられている0.2%耐力や引張強度のみならず,比例限界などの機械的特性値が必要となる.本研究では,LDSSの引張試験結果を収集し,線形回帰分析によりそれらの推定式を作成した.また,機械学習の一つであるランダムフォレスト(RF)のこの種の問題への活用に着目し,RFを用いてそれらを推定した.結果として,両推定結果の比較から,RFは推定式と同等の推定精度を持つことが明らかになった.

  • 新谷 美菜, 秋山 充良, 張 明陽, 辛 寄語
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 117-121
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄筋コンクリート(RC)構造物では,塩害などの外的作用により鉄筋腐食が発生し,その後,腐食生成物の膨張圧により腐食ひび割れが表れる.腐食ひび割れを有するRC構造物は,耐荷力の深刻な低下が懸念され,現有性能を精緻に評価する必要がある.一方,腐食ひび割れ幅と鉄筋腐食量の関係には大きなばらつきが存在し,腐食ひび割れ幅から実験式に基づいて予測される鉄筋腐食量の精度は極めて低い.本研究では,Long Short-Term Memory(LSTM)と既往の実験結果,さらには有限要素解析を用いることで,腐食ひび割れ幅からRC部材内部で生じ得る鉄筋腐食分布群の作成を可能にした.ケーススタディとして,腐食ひび割れ幅の情報からMonte Carlo法により対象RCはりの残存耐荷力の確率密度分布を試算した.

  • 浅本 晋吾, 岡﨑 百合子, 岡﨑 慎一郎, 全 邦釘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 122-131
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    本研究では,コンクリートの収縮,クリープ実験のデータベースを用いて,機械学習,重回帰,設計の予測式で,実験の終局値について回帰分析を行った.収縮に関しては,ランダムフォレストが最も精度よく実験データを予測できたが,クリープでは,ニューラルネットワークの予測精度が高かった.機械学習は,設計予測の適用範囲外の条件でも実験の傾向を概ね再現できたが,100%に近い相対湿度や0.8を超える水セメント比など極端な条件に対する予測精度は低かった.ランダムフォレストによる入力パラメータの重要度は,材料・環境条件に関する実験及び設計上の影響認識と概ね一致した.機械学習による回帰モデルで長期の収縮,クリープ予測の試計算を行ったところ,学習した範囲外の外挿やデータが少ない範囲での予測は難しいことが確認された.

  • 宇野 州彦, 白 可, 岩波 光保
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 132-141
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    港湾構造物は一般に塩害に対して厳しい環境下におかれるが,劣化した桟橋の残存耐力を評価する研究はほとんど行われていない.著者らはこれまでに,劣化度判定結果を用いた桟橋の残存耐力評価手法を提案し,汎用の構造解析プログラムにより残存耐力評価を行うことを可能とした.一方で,多数の桟橋の維持管理優先度を決定するためには,構造解析を必要としないさらに簡易な残存耐力評価手法も望まれている.そこで本研究では,桟橋の損傷面積率と損傷分布を推定する人工知能技術を導入した残存耐力評価手法を提案した.しかしここで提案する手法は,予測対象桟橋を画像情報として読み込む際に,学習モデル構築の際に用いた桟橋の種類によっては,予測対象桟橋の桟橋形状を正しく認識することが困難な場合があり,実際と異なる桟橋形状が出力されてしまう事象がある.そこで各梁の配置状況を考慮した新しい手法を考案した.本手法により桟橋形状が適切に出力され,精度良く損傷を推定できることが示された.

  • 吉田 純司, 吉崎 歩, 深澤 毅倫, 阿部 雅人, 竹谷 晃一
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 142-150
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    CT(Computed Tomography)で撮影された体内の画像は,患者の疾患レベルを判断する重要な資料であり,実務において広く応用されている.しかし,現状では,専門医が患者一人につき数十枚の画像を目視で判定しており,非常に手間がかかると同時に客観性に欠ける.そこで本研究では,間質性肺炎の患者の胸部CT画像を対象として,機械学習により患者の疾患レベルを評価し,診断をサポートするシステムを構築する.具体的には,対象とするCT画像から患部である肺領域を抽出する画像処理手法を提案し,肺領域の画像データから患者と健常者を区別するための指標を提案する.最後に,深層学習を応用し,CT画像中の患部を認識し,疾患レベルを実務で用いられている6段階に分類するネットワークを構築する.

  • 藤生 慎, 南 貴大, 福岡 知隆
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 151-157
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    わが国では,莫大な数の橋梁点検に対応するため様々な ICT,IoT,AI等を用いて技術開発が行われている.その中で,本研究では,橋梁等のインフラ構造物に非接触で表面の状態を把握することを目指して LiDARを用いて表面の状態を取得した.また,被験者を対象として人間の触感に関する基礎実験を行った. LiDARデータと人間の触感データを用いて相関分析を行った結果,「ガタガタ」感については,物体に非接触で把握することが可能であることが明らかとなった.一方,「つるつる」,「すべすべ」などの物体表面の繊細な凹凸についてはより高性能なセンサーを用いる必要性も明らかとなった.

  • 竹谷 晃一, 佐々木 栄一
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 158-167
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,橋梁の構造応答を利用して交通環境を分析するB-WIMベースの交通センシングの構築を目指し,ウェーブレット散乱変換による特徴抽出とニューラルネットワークを活用した交通車両の識別方法の提案を試みた.ウェーブレット散乱変換を用いた多層の畳み込み計算により,加速度の振動応答データから時間周波数情報である散乱係数を算出し特徴抽出を行った.限られた交通計測のデータからニューラルネットワークの学習を行うため,散乱係数を時間方向にサブサンプリングすることで学習データを増幅する方法を提案した.多段階の分類による交通車両の識別フローを提案し,それぞれの分類においてニューラルネットワークを構築した.比較的少ない交通車両のデータセットにおいても,学習データを増幅させることで高精度で試験車や路線バスの識別を可能とした.

  • 都築 幸乃, 全 邦釘, 山根 達郎
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 168-179
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    現在のアスファルト舗装点検には,効率的かつ定量的な点検手法が求められている.そこで近年では,ディープラーニングを用いて舗装画像からひび割れを自動的に検出する手法が提案され,その有効性が示されている.一般的に,ディープラーニングの精度は学習データ量に比例すると考えられているが,学習データの質にも精度は大きな影響を受ける.そこで本研究では,良質なデータを選別しながらデータ量を増やすことで,ひび割れ検出の精度を効率的に向上させることを試みた.この手法で得たモデルと,無作為に選んだデータを学習させたモデルの精度を比較したところ,本研究手法によるモデルの方が安定して精度が向上することを確認した.さらに,モデルのひび割れ検出結果を利用して舗装の健全性判定を行い,その結果をGIS上にマッピングした.

  • 志賀 純貴, 江本 久雄, 馬場 那仰, 吉武 俊章
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 180-189
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,わが国では,持続可能な社会を実現するために道路をはじめとする社会基盤構造物の維持管理業務が重要視されている.しかし,地方自治体では,行政改革による公共事業費の削減や少子高齢化による土木技術者の不足が問題視されており,近年発展している AI技術やセンサ技術により,従来の業務に代わる効率的な維持管理システムの開発が期待されている.

    そこで本研究では,地方自治体における道路管理者による路面維持管理の業務効率化を目的とし,AI技術のうち深層学習により,ハイビジョンカメラの走行映像から,平たん性に影響を及ぼす変状の自動検出を試みる.そして,既往研究で開発されてきた加速度センサーと走行映像による舗装路面簡易評価システムと組み合わせることで,変状機能の適用による路面性状評価の有用性を確認した.

  • 小林 亘, 市川 広志
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 190-199
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    工事データから道路変化の予測ができれば道路地図の更新作業を改善できる.本論文では工事発注資料の件名,工事費内訳書,数量計算表から文書ベクトルを生成して,道路変化有無の予測と使用したトークンの比較評価実験の結果を述べる.実験から,件名の文字 2-gramを決定木で予測したときの正解率 0.83,再現率 0.85が得られ,文書ベクトルが道路変化の予測に有用なことを確認できた.データ種別では,データ量の少ない工事件名,工事費内訳書が,データ量の多い数量計算表に比べて優れていた.件名から抽出したトークンでは,正解率はトークンの文字数に関係し,短い文字 N-gramが,区切り文字により分割したフレーズ,形態素解析器と辞書により抽出した単語,その単語のN-gram,分散表現を基に集約したフレーズに比べて高い正解率を示した.

  • 林 詳悟, 川西 弘一, 橋本 和明, 氏家 勲, 全 邦釘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 200-209
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    国道や高速道路など,主要道路における冬季の円滑な交通と安全確保のため,冬用タイヤ規制を実施している.この規制では,タイヤチェック要員が通行車両を停車させ,目視により種別を確認し冬用タイヤ未装着車両を本線外に誘導しているが,タイヤチェック要員や車両誘導員など多くの人員の確保と長時間拘束による人的負担の増大,交通量の多い時間帯の渋滞発生などが問題となっており,作業の省力化が求められている.筆者らは平成 28年度より冬用タイヤ自動判別システムに着手し,画像処理と判別技術の開発を進めてきた.本論は,判別手法の検討結果と,実現場での試行導入における冬用タイヤ自動判別システムの精度検証結果と AI判別における精度改善手法について述べる.

  • 李 瑾, 阿部 雅人, 杉崎 光一, 中村 一樹, 上石 勲
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 210-216
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、低頻度降雪地域では、降雪の際に、道路での車両の大規模滞留が見られる。道路管理者による異常事態の監視や路面状態の判別は、主に目視で行われているため、異常検知の効率がやや低い。

    本研究は、道路管理者が迅速に異常検知や処理判断をするための支援ツールとして、ドライブレコーダーの画像をもちいて、道路路面を「乾燥」、「湿潤」、「浸水・冠水」、「湿雪」、「圧雪」の 5種類へ目視分類した教師データを作成した。また、自動で路面状態を判別する AIモデルを構築し、昼と夜を合わせた 26199枚の画像で検証した結果、概ね 85%の正答率であった。

  • 阿部 雅人, 杉崎 光一, 中村 一樹, 上石 勲
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 217-220
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    積雪状態を評価することは,建物の屋根の雪下ろしや路上などでは除雪など路面状態の管理のために重要である.特に積雪深の評価は目視で行う以外にはレーザーなど高価なセンサを利用する必要がある.近年深層学習などの画像処理技術が向上しており,監視カメラなどの画像を利用して積雪状態を評価する検討が多く行われている.特に,沿線カメラによる路面や路肩の監視画像は,撮影場所が固定されているため位置情報は明確であり,画角の変化も比較的少ない.本研究では,監視カメラを利用した路肩にある積雪の積雪深の評価についてAI手法を適用した.

  • 松田 健介, 田頭 直樹, 大澤 剛, 福田 朗大, 劉 正凱
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 221-227
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,我が国における大気環境は広域的に改善傾向にあるものの,大気汚染物質の発生源(重交通箇所,工場等)が存在し,周辺をオフィスビルや高架道路等に囲まれている場合(ストリートキャニオン)に,局地的で高濃度な大気汚染が発生するため苦情等につながっている.このような場所での汚染状況の改善を図るために,HPや現地の電光掲示板にアラートを発信するといった方法が行われているが,アラート判定に用いられる値は現在の観測値であり,前もって予測することはできない.

    本研究は,諸条件を用いた高濃度の予測・予報手法の開発を目的として,ディープニューラルネットワーク(DNN)を活用し,ストリートキャニオン下の大気汚染予測への適用の有効性と予測に有効な入力項目の検討を行った.その結果,各入力項目(交通量の周期性を表現した指標,気温,風速・風向)がNO2に与える影響や,SPMの予測には広域的な入力項目が必要となることを確認し,深層学習がストリートキャニオン下の大気汚染予測に有効となる可能性を示した.

  • 形屋 陽一郎, 藤生 慎
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 228-234
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    金沢港は,平成23年度に日本海側拠点港に選定されて以降,クルーズ船の寄港数が増加している.寄港数の増加により,市内に多くの観光客が訪れる一方で,金沢港周辺では,送迎用の大型バスに加え,一般の見物客やセレモニー等の関連車両が集中することによる交通の輻輳が懸念されている.

    本研究では,道路交通への影響を定量的に把握するため,ETC2.0プローブ情報から得られる経路情報や旅行時間情報を用いて時間信頼性指標を算出した.休日日中と平日朝,平日夕の3ケースで時間信頼性指標を算出した結果,いずれのケースにおいてもクルーズ船寄港日に時間信頼性が低下している区間が存在しており,特に,平日夕では,他のケースに比べて時間信頼性の低下が著しく,クルーズ船寄港により平日夕の通常交通に与える影響が大きいことがわかった.

  • 大久保 順一, 菅原 宏明, 藤井 純一郎, 小篠 耕平
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 235-241
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    交通量観測に深層学習と物体追跡法を応用した安価なシステムを提案する.深層学習としてはCaffe SSDを採用,国土交通省が実施している全国道路・街路交通情勢調査の7クラスの車種判別を行う.深層学習の出力を時系列で,物体追跡法を使い,通過カウントを行う.本手法にて目視に比較して95%以上の精度を達成した.物体追跡法としては,セントロイドトラッキングを採用して,これに補助情報として方向,車種区別,存在区間を加えて判別するようにアルゴリズムを改良した.

  • 宮本 崇, 浅川 匡, 久保 久彦, 野村 泰稔, 宮森 保紀
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 242-251
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    深層学習に代表される機械学習の手法は近年に大きな性能の発展を遂げており,防災上の各種タスクへの応用も期待されている.一方で,データ数の本質的な不足やタスク処理過程の説明性・解釈性など,防災上の意思決定に用いる上で計算モデルに対処が求められる課題は多い.本稿では,機械学習モデルにおける研究動向からこの2点へ個別に対処するための方法論,およびそれら2点の課題に同時に対処する数理モデルとデータ駆動モデルを統合したアプローチについて,それぞれの考え方や具体的な手法,応用事例を調査する.

  • 伊佐 政晃, 茂呂 拓実, 金治 英貞
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 252-260
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    阪神高速では,道路構造物や管理施設,さらには車両交通,エネルギー,環境といった現実世界にある様々なデータをロボットやセンサー技術で収集・蓄積し,サイバー空間でAIや大規模データ処理技術を駆使して分析・知識化を行い,そこで創出した情報・価値をもとに,人が最適な意思決定を行っていく次世代のインフラマネジメントの実現に向けた研究を進めている.また,蓄積した各種データを利活用して新たな価値を創出する将来ビジョンの検討を始めている.『阪神高速サイバーインフラマネジメント』の概念とその取り組み状況および実現したい価値創造のイメージの例を紹介する.

  • 小濱 健吾, 中村 秀明, 神田 信也, 水谷 大二郎, 杉崎 光一
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 261-269
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,土木の分野において積極的なAI技術の導入が期待されている.しかしながら,AI技術に関する知識不足は,AI技術の導入による効果の適切な把握や,AI技術を利用するために必要な各種データの収集を困難なものとし,AI技術の導入の障壁となってしまう.本論文は,AI技術を実業務において直面する様々な課題に活用したいと考えている土木技術者のために,教材の作成を目標として,理解に必要となる基礎的な知識の概要を説明する.具体的には,AIという言葉により示されているAI技術を適切にイメージできるようにAIの歴史を説明する.また,AI技術を利用するために必要な考え方やインプット・アウトプットを整理する.最後に,実事例の紹介を通じてAI技術に対する理解の定着を図る.

  • 宮本 崇
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 270-277
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    パターン認識はデータから一定の特徴や規則を抽出する処理であり,深層学習などの機械学習手法によって高度に達成されているタスクである.深層学習によるパターン認識の本質は,適切な特徴空間の中で表現されるデータ分布を大規模かつ高精度に学習・内挿することにあると一般に考えられているが,データの得られていない領域における外挿能力や,我々の持つ事前知識や直観に反しない計算過程を同様の枠組みによって実現できるかどうかは今だ解決していない問題である.本稿では,データの背後にある法則を発見することによって自然な計算プロセスを構築し,外挿や予測に用いようとするデータ駆動モデルに関する,現在の研究動向と今後の発展性を論じる.

  • 西村 文武, 全 邦釘, 藤森 祥文, 児玉 千絵, 日高 平, 森脇 亮, 羽藤 英二
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 278-285
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    下水道は,「浸水防除」,「公衆衛生の向上」,「公共用水域の水質保全」を大きな目的として事業展開されてきた.近年は,これらの目的に加えて,下水が有する資源にも関心が高まり,リン回収やメタン発酵を通じたエネルギー回収が試みられている.一方で,施設の老朽化が顕在化しつつあるものの,財政事情や人口減少状況より,施設更新が困難であることから,既存施設のストックマネジメントを適切に行うことも希求されている.これらの目的を達成しつつ,より付加価値のある適切な運転管理を行うためには,それに必要な情報を収集するとともに,活用する手法が必要となる.本研究では,下水道が有する種々の情報の可能性について考察するとともに,情報活用例として日々取得されている運転管理データを用いた機械学習による処理水予測を行い,情報拠点としての下水道の在り方について考察した.

  • 大枝 真一, 稲毛 惇人, 篠田 拓樹, 飯棲 俊介, 宮島 亜希子
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 286-294
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    2019年9月9日未明に襲来した令和元年台風15号により,千葉県南部を中心に甚大な被害をもたらした.広域に渡る災害の場合,自治体が被害状況を集約し,さらに県,国が情報集約して復旧にあたる必要がある.しかし台風15号では大規模および長期化した停電の影響により,地方自治体での情報集約が困難であったため復旧速度に大きな影響を与えた.そこで本研究では将来の巨大台風に備えるために千葉県南部地域を対象として,台風15号の多種多様な被害状況を集約し,異種情報を統合することによって調査・解析した.これにより,住宅等の罹災(りさい)証明書の手続きには被災から申し込み手続きまでにタイムラグがあることがわかった.さらに時系列予測可能な深層学習によって,市役所等の申し込み窓口の混雑予測を行った結果について報告する.

  • 福岡 知隆, 南 貴大, 浦田 渡, 藤生 慎
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 295-300
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    ボルトの本締め作業が正しく行われたか否かは仮締め作業時に行ったマーキングの変化を作業員が目視することで判断している.しかし,作業員が確認するボルトの数は膨大であり,確認作業に時間を要すること,確認結果の客観的な記録を残せないことが問題となっている.

    我々はこの問題に対して深層学習を用いた画像処理技術によるボルト本締め確認作業自動化システムを提案する.提案システムはボルト締め付け箇所を撮影した動画を入力とし,個々のボルトの抽出,抽出したボルトのマーキングの抽出,マーキングに基づく締め付け判定を行う.判定処理の自動化と,画像処理を行うことで,処理結果を記録として残すことが可能である.本稿では提案システムの概要を述べ,システムを実環境下で運用するため,現場で撮影された動画を用いた評価を行った.

  • 楠本 雅博, Ayiguli AINI, 全 邦釘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 301-306
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    国土交通省では,建設現場の生産量を把握する一つの手法として,クレーンを用いて施工ヤードに持ち込まれる資材質量を累積する方法が試みられている.生産量を質量として累積するためは,資材の種類,質量,運搬場所の3つの要素が必要である.試行工事では,ビデオ録画映像による資材分類,クレーンスケールによる質量計測,位置情報取得システムによる運搬場所の判別が行われた.運搬場所は,資材が施工ヤードへの搬入か搬出か,ヤード内の移動なのかを判別するためのものであり,計測座標に高い精度は必要としない.本稿は,資材種類の自動判別で試行された物体検出アルゴリズムYOLOの学習データにクレーンスケールを追加し,2台の定点カメラ映像から三角測量を用いて,クレーンスケールの概略平面位置をリアルタイムに把握する手法について記述したものである.

  • 泉 翔太, 谷島 諒丞, 全 邦釘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 307-312
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,情報化施工による建設現場の生産向上に関する取り組みが積極的に行われている.しかし,マシンコントロールやマシンガイダンスなどの技術は操作をオペレーターが行うため,省人化には至っていていないのが現状である.そこで,強化学習による建機の自律制御ができれば自動施工による省人化が可能になると考えられる.本研究では強化学習アルゴリズムであるPPOを用いて,バックホウを想定したエージェントによる掘削動作の生成を行った.結果として,動作の生成に成功したと同時に,動作の高速化と掘削量の最大化を図ることができた.また,得られた知見から今後の強化学習による土木施工の展望を述べた.

  • 早川 健太郎, 黒台 昌弘, 増田 裕正, 蒔苗 耕司
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 313-319
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    建設現場を撮影した映像から,AIを用いて施工のサイクルタイム等の施工管理に必要な情報を抽出する技術の開発が行われている.筆者らは,現場の出来高管理の高度化を目的として,AIを用いて現場映像から建設機械を自動検出するシステムを開発した.このシステムを現場で運用した結果,検出誤差は建設機械を目視判読した結果と比較して±14%程度となった.このような検出精度の実現にはAIに入力する学習データの量や建設機械の向きの偏りが大きな影響を与えている.そこで「ラベル数」と「建設機械の向き」に着目し,学習データが検出誤差に与える影響について検討した.その結果,無作為に学習データを揃えるのではなく,ある一定のルールを設定して学習データを作成することで,より少ない学習データで検出精度を向上させることができる可能性を示した.

  • 板倉 健太, 細井 文樹
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 320-328
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    都市の樹木は景観の維持だけでなく、ヒートアイランド現象の緩和や二酸化炭素固定、生物多様性の維持など多面的な機能を持つ。都市の樹木の維持や管理のためには樹木のモニタリングが第一に必要である。これまで、樹木のモニタリングの手法としては、画像を用いた手法の有効性が知られている。近年、衛星画像に加えて、航空機などにレーザースキャナ(LiDAR)を搭載し、対象の3次元的なデータを取得することが行われてきた。これらのデータの広い利用には、得られた3次元点群データから樹木を自動的に検出することが重要である。これまでは画像解析の手法が提案されてきた一方で、近年は、深層学習による物体の認識などが盛んである。そこで、本シンポジウムでは、画像解析の手法と3次元の深層学習の手法を統合し、精度よく樹木の検出を行う。

  • 萩原 直明, 飯田 浩平, 須崎 光祐, 橋本 岳, 阿部 雅人, 杉崎 光一, 山本 茂広
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 329-338
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,日本では橋梁の劣化が大きな社会問題になっている.そこで,振動計測により橋梁の劣化を検知する研究が精力的に行われており,その一つとして画像を用いた振動を計測するという手法が提案されてきている.本論文では,人工マーカーレス,かつ遠距離から非接触での高精度計測を可能にすることを目的とした.その手法として,ステレオカメラで振動の様子を動画で撮影し,フレーム分割した画像をディープラーニングによる超解像技術を用いて解像度を向上させ,AKAZE特徴量による対応点探索の精度を高め,遠距離計測での精度向上させることについて,基礎的な研究を行った.

  • 都築 幸乃, 齋藤 泰彦, 中畑 和之, 蓑輪 里歩, 斎藤 隆泰
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 339-348
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    材料表面の超音波の波動伝搬を可視化したものはWavefieldデータと呼ばれる.レーザー走査等によって,超音波の伝搬の様子を短時間に可視化できる技術が開発されてから,このWavefieldデータは非破壊検査での利用が進んでいる.このとき,可視化結果から欠陥の有無を自動で判定できれば,Wavefield検査は現場に普及することが期待される.本研究では,ディープラーニングの1つである畳み込みニューラルネットワークを用いて,Wavefieldデータから欠陥を検出するシステムを開発することを目的する.非破壊検査において,学習用データとして実際の欠陥からのWavefieldデータを大量に収集するのは容易ではないため,ここではシミュレーションを援用して学習用データセットを作成した.本論文では,シミュレーションデータを用いて学習用データを増やすことの効果について検討を行った.

  • 五十嵐 浩司, 阿部 和久
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 349-358
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,構造物の老朽化の進行に伴い,その維持管理の重要性が増大している.このような背景で,コンクリート内部の状態把握,外力環境条件(塩害・中性化等)の同定,その将来予測といった技術開発および設計支援ツール開発が求められている.これに対し,橋梁の付着塩分量の測定技術の検討が行われている.本研究では,既存橋梁の付着塩分量の測定技術による解析データを利用し,機械学習による付着塩分量推定の効率的な評価モデルの構築を試みる.具体的には,ランダムフォレスト回帰を始めとする5種類のアルゴリズムを対象に,最適な評価モデルの選定の目的で,説明変数選択,機械学習用データの取り扱い方法等について検討した.

  • 高田 耕平, 北原 武嗣
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 359-364
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,橋梁のライフサイクルコスト低減は非常に重要な課題となってきている.維持管理費において防食・防錆コストが占める割合が高いため,その費用対効果から新設橋梁の15%以上に耐候性鋼が使用されるようになってきている.耐候性鋼橋梁の維持管理には腐食状態の調査が重要であり,一般的には熟練した技術者による目視による外観検査が行われている.しかしながら,目視外観評価には調査者によるばらつきが生じる恐れがあるため,簡便で精度の良い客観的な評価方法が望まれている.そこで本研究では,耐候性鋼橋梁のさび外観評価に対する接写画像と深層学習(畳み込みニューラルネットワーク)を用いたさび状態の定量的評価に関する検討を行った.検討の結果,提案手法は実務にも適用可能性があると考えられることを示した.

  • 蓮池 里菜, 木下 幸治
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 365-372
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    腐食部外観と劣化度の対応関係に未だ課題が残る鋼橋の腐食部に対し,腐食部の外観は曝される腐食環境により異なることから,腐食環境を変えた腐食促進試験を実施し,それらの促進試験により得られた試験体の腐食部画像を基にした機械学習による健全度判定を試みた.ここでは,得られた画像を試験体の腐食による質量増加量と紐づけた上で,機械学習のひとつである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により,腐食部画像の分類器を作成した.その結果,各環境で得られた腐食画像を基にしたCNN分類器では,教師データが異なるために他の環境の腐食劣化度判定の精度が低いことを明らかにした.よって,本研究の成果の限りでは,現状では橋梁毎に経時的な腐食画像を取得し,CNN分類器を作成して健全度判定を行うといったことが望ましいと考えられる

  • 中村 和樹, 和泉 勇治, 子田 康弘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 373-381
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    点検対象となる橋梁は年々増加傾向にあり,省人化を実現する新たな技術の導入は喫緊の課題である.近年,土木分野においてもその利用に注目が集まる機械学習の1つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用することは,有効性の高い点検支援の手法の1つであると考えられる.本研究では,機械学習としてCNNを適用した鋼橋の腐食検出器となる学習モデルを構築する.学習モデルは福島県が実施した道路橋点検結果の状況写真をトレーニングデータとし,喜多方地区における実橋で現地調査を実施した結果をテストデータとして,構築される学習モデルによる腐食検出精度を評価した.その結果,学習モデルは一致率の検定結果から実用上の分類精度を有しており,またトレーニングデータにおける腐食ラベルの割合の増加が精度向上に寄与することが判明した.

  • 川西 弘一, 林 詳悟, 橋本 和明, 氏家 勲, 全 邦釘
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 382-391
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    赤外線サーモグラフィ法は,コンクリート表面の熱画像を撮影し,内部欠陥を検出する.しかし,調査員の経験の有無によって熱画像診断結果に個人差が生じることがあり,点検結果の信頼性向上が課題である.筆者らは,熱画像から抽出した損傷候補を,統計的機械学習により自動判別する技術を検討してきた.本論は,橋梁上部工コンクリートを対象とした赤外線サーモグラフィ法における損傷自動判別技術の検討結果と,熱画像診断クラウドサービスの活用状況について述べる.

  • 白旗 弘実, 加藤 健太, 露木 勝博
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 392-397
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    腐食防止の観点から,構造物の排水は非常に重要な役割を担っている.本研究では,橋梁の排水管を念頭にした漏水箇所の検出を赤外線カメラを用いて行うことを目的としている.橋梁で使用されている排水管は塩化ビニル管が主流であるが,特に経年劣化がすすむと断面急曲部 (エルボー部)や継手接着部の漏水があると言われている.実験では急曲部に意図的に入れたき裂を有した試験体を作成し,水を管に流し,赤外線カメラを用いて急曲部を撮影した.これを晴れた日や雨の日,気温の高い日,低い日含めて1年間継続してデータを取得した.これらのデータを教師データとして漏水の有無をアンサンブル学習法の一つであるランダムフォレスト法を適用して機械学習させた.高い精度で漏水の有無を判断することに成功した.

  • 泉 翔太, 堀 太成, 山根 達郎, 全 邦釘, 藤森 祥文, 森脇 亮
    2020 年 1 巻 J1 号 p. 398-405
    発行日: 2020/11/11
    公開日: 2020/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    災害時におけるソーシャル・ネットワーキング・サービスへの投稿には救助や避難に有効な情報が含まれているが,情報収集における活用は未だ十分なされていないといえる.本研究では,様々な投稿の中から災害に関連するキーワードを含む投稿を取得し,有効な情報が含まれているかを判別するDeep Learningモデルを構築し,モデルが着目している単語を可視化した.さらに,投稿から位置情報を抽出することでマッピングを可能にした.構築したDeep Learningモデルは高い精度で投稿を分類できることが示された.また,位置情報も概ね正しく抽出することが示された.これにより,災害時の投稿の分類における有効性が示唆された.

feedback
Top