2020 年 1 巻 J1 号 p. 596-605
効率的に橋梁などのインフラストラクチャを維持管理するため,UAVやロボットが橋梁で撮影し得られた画像から自動的に損傷を認識する手法が近年注目されている.特に,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を代表とする深層学習手法を用いた損傷認識が検討されている.今までの研究では,実験室環境で得られたひび割れ写真や点検報告書から得られた損傷写真を用いた研究が多いが,UAV点検で実橋梁から撮影された写真に適用すると,背景や健全な構造を損傷と誤認識する問題がよく生じる.本研究ではこの問題を改善するために,点検写真とUAV写真を両方用いたデータベースを構築し,背景誤認識の問題を改善する試みを報告する.特に,画像分類のための深層学習方法で処理できる画像のサイズが小さいため,UAVでとられた4K写真小さく分割して適用する必要がある.そして本稿では,画像分割に影響されず,ピクセルレベルで損傷認識するためのFCN手法を適用し,高精度の腐食認識を試みた.最後に,損傷分類だけではなく,画像分類による損傷区分判定への適用性についても検討した.