2026 年 7 巻 1 号 p. 246-260
九州北岸では,台風通過後にピークを迎える遅延型高潮のリスクが顕在化しており,最接近時刻に基づく従来の避難判断が困難である.本研究では,深層強化学習を用い,気象・海象条件の時系列データから最適な避難開始時刻を自律的に学習するシミュレーションモデルを構築した.L2 規模の仮想台風を用いた数値実験の結果,即時型高潮では気圧低下等を予兆とした予防的避難が獲得された一方,遅延型では水位上昇後の反応的避難となり,安全マージンが著しく減少することが示された.また,天文潮位を考慮したモデルでは,周期的な水位低下を危険の収束と誤認することによる帰宅行動が頻発し,高潮の振動特性が避難判断を阻害する構造的なリスクが明らかになった.本モデルは,地域特性や高潮の発生タイプに応じた避難戦略の策定に有用である.