2026 年 7 巻 2 号 p. 343-358
交通量調査は道路計画・維持管理の基礎資料であるが、人手観測は多大な労力とコストを要する。ビデオ映像を活用した自動計測は低コスト化の有力手段であるが、カメラ揺れや車両間遮蔽により計測精度が低下する問題がある。本研究では、YOLOX 検出器とByteTrack 追跡器を基盤に、(1)IoU・サイズ類似度・距離制約を統合した揺れロバストな複合マッチングスコア、(2)二本の仮想カウントラインによる通過方向推定と重複カウント排除、(3)追跡区間内での時系列重み付きクラス再評価、を統合したAI 交通量自動観測システムを提案する。有効性の検証は二段階で行った。第一段階として、千歳市内の歩道橋からの俯瞰ビデオ映像(約2 分、GT18 台)を用いたアブレーション実験により、標準ByteTrack に対してカウント誤差率を33.3%→22.2%に改善、ID スイッチを完全解消(3→0)、方向推定精度100%を達成した。第二段階として、国道の交差点のビデオ映像(12 時間、7:00〜19:00)で人手目視観測との比較を行った結果、上り方向では人手5,301 台に対し機械5,293 台(誤差率0.15%)と極めて高い一致を示した一方、下り方向では人手5,978 台に対し機械3,707 台(誤差率38.0%)と大幅な過小計測となった。この方向間の精度差は、低俯角カメラと複数並走車線の組合せに起因する同方向内の車両間遮蔽の影響であり、本システムの適用条件と限界を明確に示すものである。本手法は画像安定化の前処理を必要とせずビデオ映像を直接入力として利用でき、遮蔽が少ない条件下では人手集計と同等精度の交通量観測が可能である。従来の人手調査が2 名以上の終日拘束を要するのに対し、本手法は初期設定後の自動連続計測を実現し、調査の省力化と高頻度化に資する。適用限界を定量的に明示し、導入前の事前評価手順を提案したことは、ビデオ映像の交通量観測への実務導入判断に資する知見として貢献となる。