2024 年 1 巻 1 号 p. 50-57
大田区では,橋のメンテナンスを通じた区民協働による橋の新たな価値創造に向けて,シェリー・アーンスタインによる「住民参加の階段」を踏まえ,橋に関する情報発信に取り組んでいる.令和4年度には,大田区全域に向けた広報紙による情報発信およびアンケート調査を実施した.その結果からは,橋に対する一定程度の関心が伺えたものの,実際に橋のメンテナンスに参加することに対する抵抗感も垣間見えた.今後,橋のメンテナンスの区民協働につなげるためには,まずは“あって当たり前”の存在となっている橋そのものに意識を向けてもらうこと,年齢や世代に見合った情報発信を行い,発信のみの一方通行ではなく相互理解につなげる対話をすることが必要と考え,①橋の存在そのもの,②橋を支える技術や人に対する意識付けおよび③年齢に応じた意識付け活動を実践した.本稿では,より日常生活に密着した身近な存在としての橋に意識を向けてもらうために実践した取り組みについて報告する.