2005 年 2005 巻 779 号 p. 779_131-779_146
住民がプロジェクトに関して完全な情報を有さない場合や利益集団がプロジェクトについて自由に発言する場合には, 住民投票による社会的決定の結果が本来あるべき社会的決定の結果とは異なる結論を導く可能性がある. 本研究では, 利益集団の発言が住民個人のプロジェクトの是非をめぐる判断に影響を及ぼすメカニズムを不完備情報ゲームを用いて分析する. その結果, 住民が利益集団の発言の信頼性を発言者の熱意により判断する場合, 住民投票に先駆けて特定の利益集団のみが発言し, プロジェクトの是非に関する社会的意思決定をゆがめる可能性があることを明らかにする. その上で, 本研究では住民投票制度が有する問題点を克服する可能性について理論的に考察する.