抄録
弾性波速度は異方性弾性体の弾性率を求めるための有効なパラメータの一つである. 供試体岩石の異方性弾性率測定には横波速度が必ず計測されているが, 岩盤では境界面で生じるモード変換や横波の複屈折等により, 直接到達する横波の識別が困難なことが多いと予想される. したがって縦波速度のみを用いた弾性率決定が可能であれば岩盤物性評価に異方性を考慮することが容易になると考えられる. 本研究は縦波速度で最大2%程度のばらつきを加算した数値計算モデルを作製し, 縦波速度分布から逆算により異方性弾性率を決定する方法を検討した. その結果, 直交する3平面内, 15度おきの縦波速度分布情報が得られても, 最大2%程度のばらつきが含まれる場合には満足な解を得るのは困難であるが, 誤差関数の微係数の計算に解析の各ステップで得られる横波速度情報を用いれば解が得られることが示された.