抄録
AE波形のモーメントテンソル解析法により, AE発生源の機構の同定が可能となっている. そこでノッチ付き供試体の曲げ試験を行い, ノッチ先端の破壊進行領域の形成過程の解明に適用した. モーメントテンソル成分と損傷力学パラメータの関係についても検討し, モーメントテンソルから損傷過程の評価も試みた. 破壊進行領域の形成過程では, いずれの供試体でもAE源はある範囲に広く発生し, 引張クラックがその外縁部に,せん断クラックが最終破壊面近傍に主に観察された. 一方, 損傷過程については, コンクリートではステップ状に不連続的に累積され, モルタルでは漸増的に累積されることが認められ, 破壊進行領域での損傷累積には, 破壊モードより微小クラックの発生過程に依存することが明らかになった.