抄録
水文事象の不確定性を考慮した水と汚濁物質収支のシミュレーションモデルを利根川水系上流域に適用して, 利水ダムの建設や節水に関する施策, ダム群の運用方法の変更といった水資源問題に関する施策についてのシミュレーションを行い, 得られた結果から (i) 各施策による渇水被害額の削減効果の比較, (ii) 渇水日数と渇水被害 (不足%日), 渇水被害額の関係, (iii) 渇水被害の年間変動, (iv) 河川水質への影響, の4項目についての考察を行った. その結果, 生活系水利用の10%の削減は利水ダムの建設とほぼ同程度の渇水被害額の削減効果があること, 取水制限開始貯水量や最大取水制限率の変更などのダム群の運用方法に関するシナリオでは対象流域内とその下流域とで全く逆の効果が得られること, などいくつか知見が得られた.