2001 年 2001 巻 667 号 p. 85-101
本研究では, これまでに指摘した「思い込み均衡」をより効率的な状態へと誘導するために必要とされる交通政策を議論するための基礎的な知見を得ることを目的とした交通システムシミュレーションを行った. 分析に用いたシミュレーションモデルは, 道路上の混雑現象を表現するだけでなく, 個々の運転者の記憶の蓄積, 選択ルールの学習といった長期的な情報処理プロセスを考慮した上で, 道路交通量の日変動をシミュレートするものである. 得られたシミュレーション結果と, 従来の習慣と思い込みに関する理論的・実証的研究で得られている知見に基づいた考察から, 交通量過多となっている選択肢の一時的および継続的な容量削減が, 思い込み均衡の効率化に適した交通政策である可能性を指摘した.